
「普通の人」であることを心がけています
ーー普段気をつけていることはありますか?
「常にアンテナを張る」という基本動作の他に特に気をつけているのは、「普通の人」であろうとする、ということです。
出版業界といえば、朝が遅くて夜も遅くて、毎晩飲んでばかりで……という先入観がありますよね(笑)。まあ、そこまで極端でなくても、他の業界の方とはちょっと違う生活をしてしまいがちです。でも、それでは読者の気持ちがわからなくなるんじゃないかと思うんです。
だからなるべく、いま企画している本の想定読者と同じ目線であろうという努力はしていますよ。例えば、「この読者層の人だったら、このくらいの時間帯に家に帰って、こういうテレビを見ているんだろうな」とか、「休日はこんなことをしているんだろうな」とかね。
少なくとも、悪い意味での“業界人”にはならないように、常に消費者目線でいるように心がけています。
読者がいて、そこから初めて企画が生まれる
ーー仕事をするうえでのこだわりはありますか?

読者の顔が見え、その気持ちが自分にも理解できて、初めて企画が生まれる
当たり前と思われるかもしれませんけれど、「自分が心底共感できないのに、それが売れているという理由だけで企画を立てない」ということです。
「いまはこのテーマが旬だ」とか「この人の本が売れている」と聞けば、なんとなく気になりますよね。でも、自分自身が「これはいい!」と思えないかぎり、巷のトレンドだけを追いかけて立てた企画は、結局いい本にならないと思います。
だから、「売れそうだから」というだけでは、私の中では本作りの動機にはならないんです。初めに読者の顔が見えて、その気持ちが自分にもよくわかって、それでようやく企画は生まれるので。
編集者は縁の下の力持ち
ーーでは世の中の売れている本に法則があるとすればなんでしょう
うーん、何でしょうね。法則なんてものがあるなら、私のほうが知りたいくらいです(笑)。
そうは言いつつも、売れる本に共通していると感じるのはやはり「作り手の情熱」じゃないでしょうか。
作っている張本人がワクワクしていなかったら、読者にはその本の良さなんて絶対に伝わりませんよ。
それから、これはある先輩からの受け売りなんですが、まだ駆け出しの頃、「売れる本作りのポイントは“3T”だ」と教わりました。
- Title(タイトル)
- Theme(テーマ)
- Timing(タイミング)
どんなにいい本でも、ピンとくるタイトルでなければ目に留まらないですよね。テーマが大切であることはもちろんですし、「いい本だったのに世に出るのが早すぎた、遅すぎた」というのでは本は注目してもらえませんから、やはりタイミングも外せません。
この3つのほかにもう1個、最近4つ目の“T”を見つけたんです。
- Teamwork(チームワーク)

売れる本に共通していると感じるのはやはり「作り手の情熱」じゃないでしょうか。
売れる本はたいてい、良いチームで作った本だと思います。良いチームだから必ず売れる、というわけでもないので難しいところなんですけど(笑)、私の経験上、売れた本で悪いチームだったことはありません。
みんなの状態がいいと最後の一踏ん張りができる。「疲れたけど、やっぱりもう一度考えてみる?」と言える。
少なくとも「お前なんかとはもう口もききたくない!」なんていうギクシャクしたメンバー同士では、そんなこと言えないですよね。
ーー常盤さんはそのチームの真ん中ですよね?
真ん中というよりは、下支えしているという感じでしょうか。同じ1冊の本を作るチームのメンバー同士でも、直接顔を合わせる機会があまりない人たちもいますよね。たとえば、著者さんと印刷所の方とか。
そういう人たちが、たとえ顔を合わせなくてもうまくコミュニケーションできるように、あるいは余計なことに気を遣わず自分の仕事に集中できるように、環境を整えるのが私の仕事だと思っています。それぞれのメンバーをつなげるハブ役でもありますから、そういう意味では“真ん中”とも言えるかもしれませんね。







[...] (続く) [...]