
「人生で 満足させなければならない相手は自分自身だけ」
ーー思い出に残る本のエピソードを聞かせてください。
| マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった | |
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矢羽野薫
ランダムハウス講談社 2007-09-21 おすすめ平均 |
将来を約束され、何不自由なく暮らしていた、マイクロソフトの若きエグゼクティブ、ジョン・ウッド。

「人生で 満足させなければならない相手は自分自身だけ」(本書カバー前袖より抜粋)
その彼が、たまたまトレッキングのために訪れたネパールで目にした光景をきっかけに、大きく人生を変えていく、というノンフィクションです。「こうした方が世間的にいいから」とか、本当は他にやりたいことがあるのに自分で勝手に限界を設けて、できない理由を考えるのはもったいないことです。
情熱は、外から人に注入してもらうものじゃない。自分の気持ちに正直になってみて、初めて内側から湧いてくるものなんだと思います。人生にはいろいろな制約があるので、やりたくてもできないことだってもちろんあります。それでも、やっぱり自分に素直になることは大切だなと、この本を作りながら思いました。
ーー本から学ぶことは大きいですよね。
そうですね、本というメディアは偉大です。『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の中で、ジョンはネパールの小学校に案内されます。彼を驚かせたのは、本のない、空っぽの図書室。子どもたちがどんなに勉強したくても、ネパールのような国では本を手にすることすら満足にできないのです。そこでジョンは、貧しい国の子どもたちに学びの場を提供する「ルーム・トゥ・リード」という組織を立ち上げました。
メディアの規模で言ったら、テレビ、インターネット、新聞、雑誌などに比べれば本なんてたいしたことはないんですよね。それでも、ネパールの山奥で暮らす子たちが未知の世界を覗く機会を持てるのは、活字の力だと思います。それに本は、想像力という人間の一番美しい部分を育めるメディアでもあると思います。
この本を作っていて、この仕事に携われてよかったな、と改めて思いました。『最後の授業』を始め、他にも売れた本はいくつかあるんですけど、この本はもっと多くの人に届くといいな、と思っている一冊です。
本作りは翻訳作業であり知的なゲームである
ーーカバーの色使いが印象的ですね
本作りで好きなことの一つが、デザイナーさんとのやりとり。本作りとは、つまりは広い意味での“翻訳作業”なのだと思っています。
英語から日本語へ、難しい日本語からわかりやすい日本語へ、というのも翻訳だし、著者の「言葉」を「イメージ」で表すデザイナーさんの仕事も、言ってみれば翻訳です。
この伝言ゲームが途中で途切れずに最後まで正しく伝わるか、この知的なゲームが楽しいんです。
『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の原書のカバーデザインには、著者のジョンがヤク(ロバに似た動物)を引いている写真が全面に使われています。
でも、日本語版でカバーに同じ写真を使ったら、浮世離れしたエキセントリックなアメリカ人の旅行記か何かだと思われてしまいかねないと思いました。
せっかくの内容なのに、それではもったいない。
そこで、デザイナーさんとアイディア出しをしながら、シンプルで親しみの持てる線画を描いてもらおう、ということになったんです。色のトーンは、読み手に元気をくれるこの本の内容を反映して、濁りのないビビッドなものに。この本のカバーデザインには、ちょっとした「遊び」があるんですよ。
気づいてくれる人はあまりいないかもしれませんが、帯を外すと、カバー表4にヤクを引いて本を届けにいくジョンのイラストが現れるんです。グリコのおまけみたいに、ちょっと得した気分になりません(笑)?
カバーを外してみてください。本体表紙に使った黄土色のファンシーペーパーは、やや埃っぽいネパールの市街地の素朴さをイメージしています。本文用紙も、普通なら長時間読んでも目が疲れないようにクリーム系のものを使うのですが、この本ではジョンの正直さ、まっすぐさを表現するために、あえてホワイト系の用紙を使いました。
本ができ上がった瞬間は嬉しいですよね、そうそうこれこれ!みたいな(笑)。









[...] (続く) [...]