
企画はリアルとバーチャルの二つの側面で考える
ーーインターネットはよく使われていますか?
そうですね、使い方は主に二つ。一つは本を出した後にどういうコメントが挙がっているかを見ます。読者の反応を確認します。それから、売上データをこまめにチェックしています。他社の本も調べて、こういうデータの動きのときはどんな販促が考えられるのかを、自分なりに分析しています。

情報管理にはノートを活用していますが、最近はiPhoneもかなり役立っています
もう一つは企画を立てる時です。基本的にはリアルとバーチャルの二つの側面から企画を立てます。まずはリアル。企画のテーマが明確なときは、周りの知り合いで信用のある人に話を聞いて、興味を持ってもらえるかどうか確認します。
バーチャルとしては、以前に似た本のテーマが出ていたら、アマゾンなどでチェックして、その本に対してどういう感想があがっているのかをネットでチェックします。そして、ここがよかったという意見を、自分の企画の参考にしています。
それと、類書の売上データをチェックして、テーマとしてのニーズを分析したりしています。iPhoneは、外出先でもストレスなくネットが使えるので、その辺を調べるのが画期的に速くなりました。
ーー販促はどのようにやっていますか?
最大のポイントは読者ターゲットのニーズと生活スタイルをどこまで理解しているかだと思います。彼らがどんな人たちで、何を求めていて、どこに集まるのかを知ることが重要です。
この前エリエス・ブック・コンサルティングの土井英司さんが言っていたのですが、販促で大切なのはリーチとコンバージョンだ、と。リーチとはターゲットにどれだけアプローチできるか。コンバージョンとはそのアプローチした人に購入までどう結びつけていくか。そのリーチとコンバージョンの両方ができている本が売れるのだそうです。私もまったく同じ考えです。
ーー具体的にどの様にリーチするのですか?
リーチするには、ターゲットにアプローチできるチャネルを、より多く押さえる必要があります。この先どうなるかはわかりませんが、今のところ、もっともはっきり見えているチャネルはブログとメルマガです。あるいは、何かのネットワークを活用して、特定の読者を囲い込むことです。実際にその二つを上手にやって成功している出版社もあります。
特にビジネス書は、アルファブロガー(影響力のあるブロガー)の存在が大きくなってきていて、この方たちが取り上げてくれれば確実に本は売れます。それが良いか悪いかは別にして、これは事実です。ウチはまだまだできていませんが、有力なブログやメルマガを持っている人と連絡を取り合って、取り上げてもらうようにネットワーク化できると強いですね。
それに加えて、ビジネス書は常に同じ読者が買っているという仮説もあります。
そこには、読者同士のネットワークもできていて、ブログで、読者同士の横のつながりが結構あるみたいです。一人に取り上げられると他でもバァーっと取り上げられたりするんです。今後はリーチしていくために、そうした販促のチャネルをもっと見える化していきたいと思っています。
コンバージョンの鍵は、土井さんもおっしゃっていましたが、コピー力だと思います。本を買うときに参考にするのは結局コピーです。僕はネットとリアルの2つでコピーをできるだけ意識しています。ネットでは、アマゾンなどでどのように紹介文を入れるかを考えます。リアルでは、新聞広告などで、どういうコピーが読者にうけるのか、必死に練りますね。
僕ほとんど仕事が辛いと思ったことないんですよ(笑)
ーー具体的にはどのようにコピーを練っていますか?
生活する中で、いかにターゲットのニーズを知るかということが原点です。
勉強会に行って読者のニーズを拾ったりもします。
そういうところに行かなくても、友達と話していたりして、普通の読者はどういうことを考えているのだろう、とか、ヒントは日常に転がっていたりするものです。ただ、それを最終的にキーワードに落とす、ということが重要です。
ーー生活している中で気を使うというのはニーズを拾うということですか?
そうですね。編集の仕事ってプライベートと仕事の境目がないんですよ。常に企画を考えてて、生活しながら企画と結び付けているのだと思うんですよね。生活の中の「なんでだろう」をピックアップして、企画につなげています。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』なんて、やっぱりすごいですよね。なぜ潰れないのか、タイトルを見ただけで、多くの人が興味をもったと思います。
ーー仕事との境目がないとおっしゃいましたが、すごく忙しいですか?
そんなことないですよ、しっかり休んでいます(笑)。ただ、時間の境目がないので、早く会社を出たときは家に帰って仕事をしたりするし、あとは、外で仕事をすることも多いですね。原稿チェックや校正は、ほとんど外でしています。
その方が集中できるので。
こんなことを言うとカッコよすぎるかもしれないんですけど、僕ほとんど仕事が辛いと思ったことないんですよ(笑)。最初の会社で働いていたときはまだ若かったので、「こうじゃない働き方もあるんじゃないか」って迷いがあったので別の意味で辛かったですけど、「やっぱりこの仕事しかない」と腹をくくってからは、編集の仕事で辛いと思ったことはまずないですね。本当に申し訳ないですけど、楽しいです(笑)。
若いときは、問答無用にやらされることのほうが多かったですけど、経験を重ねることで、やりたいこととやれることの幅のほうが広がってきたんだと思います。だから忙しくてもストレスを感じたりすることは、ほとんどないですよ。お酒があまり飲めないので、飲み会に行った帰りは正直しんどいですけどね(笑)。
ーー好きなことを仕事にしているのっていいですね!
恵まれていますよね。会社にもすごく感謝しています。今は自由なポジションでやらせてもらえているのが大きいかな。
大学では文学部だったので、出版社で働きたい人が多く、でも就職氷河期でしたから実際に行けるのはすごく少なかったです。僕は運良く新卒でもぐりこめました。最初の会社で「会社は小さくても、出版社の名刺を持っていれば、だいたいの人は会ってくれる」と聞いて、「あぁ、この仕事はすごいな」って思いましたね。







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[...] (続く) [...]