ダイヤモンド社 市川有人さん

企画アリキで本を作る



ーー企画が浮かんだときはどうやって著者の方を見つけていますか?

僕は企画を最優先に考えています。自分のやりたい企画をまず考え、それに合った著者を探すというスタンスにできるだけ近づけようとしていますね。そのために、どんな小さなことでも思いつきをネタ帳に書きとめています。本や雑誌、ネットなどを読んでいて自分が考えていることと同じようなことを書いている方がいたら、すぐに連絡をとるという感じです。

それから知り合いの紹介です。面白い人の周りには必ず面白い人がいるものなので、紹介してください、とふっておくと、あとで紹介してくれるケースも多いです。

あとはエージェントの紹介と、持ち込みですね。持ち込みは実際なかなか形になりませんが、持ち込まれたものには全部目を通しますし、できるだけお会いするようにしています。





人間力のある人と出会いたい



ーーどんな人と仕事がしたいですか?

市川さん思い出の作品「銀座ママ」シリーズ

市川さん思い出の作品「銀座ママ」シリーズ

やはり人間力のある方ですね。一緒に仕事をしていて、自分も何かを学べるというのがもっとも楽しいですから。自分にはない魅力をもっている方と仕事をして、一冊作るごとに自分も成長していけるというのが理想ですね。

編集者というのは、他の職業より魅力的な人に出会える機会は確実に多いので、自分の成長のチャンスにしたいと思っています。自分が変わるには、必死で変わろうとするより、たった一人でも、自分が理想とする人に会ったほうが早いんですよ。変化というのは、たいがい出会いから生まれるもので、そうした出会いを仕事の枠を超えてプライベートでも大切にしていきたいと思っています。

それと、著者はその方にとっての初めての本を担当したいですね。何冊も出されているベテランの方のほうが仕事は進めやすいですけど、妙な常識にとらわれている分つまらないことも多いです。まっさらの状態からその方の魅力を最大限引き出して、これまでにないような本にすることができれば、編集者として本望です。

幻冬舎の見城徹さんが、ご自身の本の中で「無名のものを見つけ、それを大きくして、初めて編集者といえる」と書かれていたんですが、僭越ながら私もそう思っています。

ーー座右の銘は?

チャップリンの言葉、「恐れることはない。大切なのは勇気だ、想像力だ」です。

有名な言葉ですが、やはり僕も何かを切り拓いていくには「勇気」と「想像力」が大切だと思っています。本を作っているときはいつも不安ですから勇気が必要ですし、自分のやりたいことをどこまで具体的に想像できるかも重要です。

本を一冊作るにあたって、最初から僕は常に完成形をイメージするように心がけているんです。それがはっきり見えたときは良い本になるケースが多いです。逆に最後まで売れそうなイメージがわかないときは、やっぱり売れない。

完成形をイメージできなければ、それに近づけることもできませんから、結果的に当たりさわりのないものになってしまいます。ところで、本当はこの名言には「想像力」のあとに、「ほんの少しのお金」と続くのですが、それもまた大切ですね(笑)。





他とは違う路線で



ーー何か思い出の本を紹介してください。

銀座ママ麗子の成功の教えシリーズ(全5冊)』と『オーラの営業 シリーズ(全2冊)』が思い出深いですね。2つとも、マーケティングや営業のスキルを小説仕立てで解説しているもので、フィクションなんですけど、読みながら自然とビジネススキルが学べるようになっています。ストーリーとしてもすごく面白くなっていて、難しい理論が簡単にわかるように作りました。『銀座ママシリーズ』は、漫画家のしりあがり寿さんのイラストを大きく使い、店頭でのインパクトもあったと思います。

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ーービジネスマン向けの小説ですね!

そうです。僕はそれまでまったくビジネス書というものを読んだことがなかったので、ちゃんとしたビジネス書を作れなかったし、作ろうとも思いませんでした。会社も小さい会社で出版社として完全に後発ですから、他の会社とは違う路線でいこう、ということで初めてビジネス小説をやりました。2005年にシリーズの1冊目が出たのですが、ここから本格的にビジネス書に取り組みました。

銀座ママシリーズによってうちの会社は大きな転換期を迎えたと思います。若者向けのちょっと変わったビジネス書を出す版元として少しずつ認知され、営業もだいぶしやすくなりました。やたらとビジネス書には不釣合いなイラストを表紙に使う版元としても話題になりました。そして自分でも、ビジネス書の深さをこのときはじめて知って、このジャンルで勝負してみようと思ったんです。





読者の人生につながっている本を作りたい



ーーそれでは最後に編集者としての市川さんの哲学を教えてください。

僕はすごく大きく転向したタイプなんですよ。最初は売れない本でもいいというか、一部の人にわかってもらえればいいと思ってやっていました。あんまり一般受けするようなものとか好きじゃなかったんです。前の会社で作った本で、全然売れなかったけど、一部の人から熱狂的に支持されたものがあって、すごく満足してた部分もありました。当時は他では出してない、誰も出せないようなものを自分の会社で出すというのが快感で、そこにやりがいを感じていたんです。

現在、僕はそこからだいぶ逆の方向に行っていると思います。『情報は1冊のノートにまとめなさい 』と、それに続く『読書は1冊のノートにまとめなさい』が類計で45万部までいったことが転機となりました。

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45万部までいくと、読者の反響というのがものすごくて、愛読書カードの戻りはすごいし、ネットからの感想もかなりいただきます。ほとんどが、「役に立ちました。ありがとうございます」というものです。それは圧倒的な量によって、今まで経験したことのない大きな大きな感動でした。

日本中の書店に置かれていますから、ほとんどの人が本の存在を知っています。
そうすると読者とダイレクトにつながっている感覚があって、ネットを見ると批判的なことも結構ありますけど、やはり読者の人生に役に立った本を作れたという喜びのほうが大きいです。

少ない人数の読者に向けて良質な本を作ることも大切です。でも、作り手としては、読んだ人の人生に良い影響を与えられるなら、1000人より1万人のほうがいいし、1万人より10万人のほうが嬉しいです。

この2冊のヒットのおかげで、読者の反響を全身で感じました。それは、読んだ方一人ひとりの人生に何らかの影響を与えられたということでした。
今は、読者の人生につながっている本づくり、が僕の哲学です。

誰に向けて作られたのかよくわからない本だったり、毒にも薬にもならない内容ではなく、この本を読んだ読者の人生が何かしら良い方向に変われる本を作りたいと思います。

今はビジネス書をやっているので、人生というより仕事に役立つ本ですけど、働くことを通して生き方自体にも影響を与えられるような本がいずれ作りたいですね。

ーーどうもありがとうございました。

ダイヤモンド社 市川 有人さん 最終回

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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