
体当たりで実現した一冊
ーー『どん底からの成功法則』の堀之内さんとのお仕事はどうでしたか?
実はテレビ番組で堀之内さんを観るうちに、堀之内さんの厳しい目の奥の優しさ、温かみを感じていたんです。この方はきっと多くの方に届けるべきメッセージをお持ちに違いない、そう確信しました。ホームレス生活から社長になられたご経験はもちろん、お人柄にとても惹かれたというのが企画の動機です。さっそく問い合わせをしたところ、当時、専属のライターさんがいらっしゃるとのことでしたが、「どうしても堀之内さんと直に本が作りたい」という気持ちが抑えられず、ある日、浜松の生活創庫本社にお伺いし、直談判したんです。
裸一貫から、すべてを切り開いてきた叩き上げの方なので、もしかしたら、私のその体当たりな姿勢に共感していただいたのかもしれません。取材でお話を伺っていて、堀之内さんがみなさんに愛される理由がよくわかりました。とても正直でまっすぐで、人間的な魅力にあふれた方です。取材でお伺いしたあらゆる話を、いまでもまざまざと思い出します。入社2年目あたりだったかと思いますが、強烈に面白い取材をさせていただいて、本当にいい経験をさせていただいたと思っています。もちろん堀之内さんに限らず、本当にいい著者の先生方に恵まれていて、幸せ者だといつも感謝しています。
と、そこまではよかったんですけど、依頼したライターさんから上がってきた原稿の仕上がりを見ると、堀之内さんの魅力が読者に上手く伝わるものではありませんでした。この本は口述筆記でつくっているのですが、取材はあんなに面白かったのに、この原稿?という感じで納得がいかず、もう一度書き直してもらったんです。それが、それでもまだ望んだ形、私の理想とする原稿に近づけなかったので、最終的に私がライティングの作業を一からすることになりました。

素晴らしい著者の方と仕事が出来て、本当に恵まれていると感じます。
ーー編集者が文章を構成されることもあるのですね。
もちろん、口述筆記での本作りの場合、通常はライターさんがいい原稿を上げてくださって、私は編集の作業に集中するので、いつもというわけではありませんが。でも、実際に自分で全部は書かなくても、「書こうと思えばライターさん以上のものが書ける」くらいのライティング力があったほうが、編集者としてはいいでしょうね。
実際、弊社にはそんな編集者も多いです。そうでないと、ライターさんに対して、どんな原稿を求めているのか指示できないですし。役割分担はありますが、すべてをディレクションするのが編集者の責任でもあり、一番の面白みです。私自身、ライティング力はこれからも高めていきたいと思っています。
ーーその他に編集者になるために身につけておいたほうがいいスキルはありますか?
技術的なスキルは、仕事をやりながら身に付けていけるものだと思うんですよ。細かい赤字の入れ方や、文章作成能力だって、毎日やっていればだれでも成長します。
私が思うのは、そんな技術的なものより、「きちんと考える癖」をつけることですよね。
今回の『検索は、するな。』はまさにそんなテーマの本なので、ぜひ後輩に読んでほしいと思っているんですが、一番大切なのは、「その答えは自分の頭でしっかり考え抜いた末に出てきた答えか」ということです。
当たり前ですが、「考えること」って、どんな仕事でも必要となることですし、出来不出来の差って、そこに起因していると思うんです。
編集者であれば、まず企画を立てますよね。著者を見つけて、その著者にどんなテーマを投げかけるのか。著者の本質をつかんで、それをどのような切り口で世の中に訴えかけるのか。
そして、本の構成やメッセージの落としどころをどこにもっていくか。この本は誰が読む本か。など、物事をしっかり考えられる人に向く仕事だと思いますよ。自分でちゃんと考えられるかどうかというのは、編集者だけでなくどんな仕事でも大事ですよね。仕事ができる人の違いはそこだけなんじゃないかと思うくらい。私も反省すべき点はたくさんあって、これから精進したいと思ってるんですが(笑)。
著者と編集者の化学反応
ーー多くのビジネス書を作っていますが、その醍醐味はなんでしょうか?
ビジネス書は同じ著者でも、切り方によって全然違う本になるじゃないですか。この編集者と組んだらこの著者はこんな風になるんだっていう化学反応です。ビジネス書をやっている編集者の方の多くは、そこが面白いと感じているのではないでしょうか。うちの会社ではよく言うことですけど、10人編集者がいたら同じ著者の同じテーマで本を作っても、全く違う10本ができると思うんです。
テーマは同じでも、切り口がちがったり、打ち出し方がちがったりしますし、そもそも、編集者によって著者のメッセージの引き出し方がちがいます。細かい点ではどのメッセージをゴール地点として文章を組み立てていくか、パッケージをどのデザイナーさんと組んでやるか、など、すべての場面で、各編集者によって千差万別。編集者のカラーが出るのがビジネス書の本作りだと私は思っています。そういう意味でも、本が完成したときは達成感が大きいですよ。








[...] (続く) [...]