ダイヤモンド社 和田史子さん
思い出のシリーズ、『絶対内定』

思い出のシリーズ、『絶対内定』

コンプレックスが強みに



ーー編集者として、普段気をつけていることはなんでしょうか?

今流行っているものを知り、受け入れることでしょうか。たとえばお笑いのオードリーが何でウケているんだろうとか、低価格カジュアル服の『フォーエバー21』の行列とか、幅広く人に受け入れられているものについては、「なんでそれが人の心をつかんでいるんだろう」と素直に考えます。

おそらく、売れているものを作れる人は、売れているものをバカにしない人だと思うんですよ。「ベタ」を恥ずかしがらない人だと思うんですね。「ハリウッド映画はくだらないから見ない。単館映画のフランス映画が好き」、という人は、一部のコアな人のハートを、がっちりつかめる人だと思います。

でも、そういう少しマニアックなものも好きだけど、「『おくりびと』を観にいって号泣しました」的素直さ、ある種のミーハーさも大事かと思います。流行に乗っかることを恥ずかしがらない。これは、雑誌編集時代には特に気をつけていましたが、書籍編集でもすごく大事なことだと思います。

ーー流行に敏感であるということですね。

そうですね。雑誌の場合は、まず流行を面白いと思わなかったらアウトです。逆に深入りしすぎるとマニアックな記事になっちゃいますし、読者と近い距離感で、そのトピックに対してそこそこの温度感(興味・関心)を保つことが大切です。書籍の場合は、著者と読者の間に立つ者として、ミーハー(一般的)とマニアック(専門的)のバランスをとっていく必要があるように思います。

実は私、昔はすごくミーハーで飽きっぽい一面がありました。それは薄っぺらいとか、調子がいいとか、何も形になっていないんじゃないかと、当時の自分のコンプレックスでした。編プロ時代、雑誌の編集をしていて気づいたんですよね。そのコンプレックスを最大限に生かせる仕事って雑誌編集なのだと。次々と流行に飛びつき、面白がり、次の流行を生み出す。まさに好奇心旺盛な人のための仕事です。

コンプレックスが、雑誌の当初の編集の仕事においては、むしろ適性だったとは。編集の仕事を選んでよかったな、と思いましたね。ところが、後にそれを乗り越えなければならない時期がくるのですが。

ーーと、いいますと?

ややマニアックな情報を扱う女性誌の編集部に転職したときに、衝撃を受けました。読者の方が自分より明らかにその物事に対する興味や知識が深いんですね。その時に、今までみたいに「面白ろそう!」だけでは、読者の満足は得られない。一歩踏み込んだ知識なり情報を身につけることの必要性を感じました。そこからは、ひたすら勉強でした。コスメとか、ブランド時計とか、もはや勉強みたいな感じで、関連書を読んでみたり、お店に行ってお話を伺ってみたり。そして書籍の編集者になったときは、もう一段深くという感じですね。書籍編集者になり、よりじっくり物事に取り組む、深く関心を持つ、といった具合に、自分の嗜好や行動も、少しずつシフトしていきました。

とはいっても、やはり幅広く興味を持つことに越したことはないです。なので、新人の方が慌てて特定の分野の勉強をする必要はなくて、むしろ何でも面白いって飛びつくっていう姿勢を大切にしてほしいですね。

ーー現在編集担当されている本についても勉強なさるんですか?

そうですね(汗)。無知な人間なので、一から学ぶことの方が多いですね。遅まきながら、「知る」ことの楽しみや奥深さを味わう毎日です。

30代になると仕事にも慣れてきますから、なんでもわかっているとか、できると思いがちなんですけど、まだまだやればやるほど、知らないことの方が圧倒的に多いんですよね。むしろ知れば知るほど、いかに自分がものを知らないかがわかってくる、その発見の旅が楽しいんです。



読者に何かのきっかけをつかんでもらうために



ーーそれでは和田さんにとって編集者とは何ですか?

むずかしいですね。「ロマンを伝える」ということでしょうか。ビジネス書や実用書、就活本は、明確な「目的」や「効能」、読者にとっての「利益」を与えるものではありますが、それだけではないと思っています。そこが本の魅力なのではないでしょうか。

たとえば『絶対内定』では、マニュアルで内定するのではなくて、自分で納得して、やりたい進路を見つけるという、ある意味、自分の人生と向き合う本です。自分で自分の人生を切り拓く。そこにはロマンがあると思っています。

村上式の英語勉強法』という本も、単なる効率的な英語学習方法を教える本ではないと思っています。英語という自転車を乗りこなせるようになったら、グローバルな世界を好きなように行けるよという著者のメッセージにも、ロマンを感じます。

たとえば、誰でもできる素晴らしい英語勉強法を教えてもらって、私だけが身につけてペラペラになるより、もっと多くの人にそのメソッドをお伝えして、さまざまな分野で100人の人が世界で活躍した方が効率いいと思いますし、日本の未来にとってもよいことですよね。

うまく言えないのですが、「未来に活躍する100人」がイメージできる本ってロマンを感じますよね。そういう本をこれからも作っていけたらいいなと思います。

ーーどうもありがとうございました。

ダイヤモンド社 和田 史子さん 最終回

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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