

編集者より書き手のタイプです
著者によってもたらされた非日常的仕事スタイル
ーー作家さんの発掘が得意とうかがいました。
いえ、そう言っていただくことが多いんですけど、実はそうでもなくて。僕はすごい変わってるんですけど、自分からはあまりアプローチしないんですよ。僕の場合、自分から行くと大体失敗するんです。特に名前の知れている人にアプローチするとだいたい喧嘩したりとか、あまりセールスが伴わなかったりとか、問題がすごい多くて、ある時期から諦めたんですね。
それならばと、「来る者拒まず」スタイルに切り替えました。だから、今まで一緒にやってきた著者の方々のほとんどは、発掘したのではなく、僕のところに来てくれた人なんですよ。探してる訳じゃないんです。
普通は持ち込み原稿がダメだと言われるんですけど、僕の場合は著者から指名していただいたり、持ち込み原稿の方が当たることが多いんです。
ーー川辺さんが引き寄せていらっしゃるんですね
人の引きだけはすごい強いかもしれませんね、くじ運は弱いんですけど(笑)。良い人が必ずポッと突然現れて来るんですよ。何かこんこなことをやりたいなって思うと、ピッタリ合う人が出現するんです。まるで魔術みたいに。それがなぜなのかは、僕にもわからないんですけどね。
ーーその中でも思い出深い著者さんとその作品はなんでしょう。
やはり『ウケる技術』の水野君ですね。彼は僕のところに来るまで11社営業していて、打ちのめされていたんですよ。僕のところにはさも初めて来るような顔して来てましたけどね(笑)。先程お話しした著者とのトラブルで大失敗してしまった本を読んでくれていて、そのあとがきに書いてあった僕の名前を見ての指名だったんですね。あまりに水野君が面白い人だったんで、その場で決裁しました。そこからスタートですね。とにかく彼らは編集作業から脱稿間近まで毎日のように会社に来てたんですよ。毎日がカーニバルです。そんな空気、僕は大好きですね。
ーー毎日ですか!
そうなんですよ。何をしてたかって言ったら、僕がいない時に僕のパソコンで原稿をパコパコ打ってる訳ですよ。しかも著者は水野君以外に小林君と山本君と3人いたので、入れ替わり立ち代わりで。会社に夜中までいて、原稿を書いていることも珍しくなかったですね。突然夕方から来て、そこから朝の3時ぐらいまで自分の家みたいに過ごしているわけです。
何で俺がいないのに、お前らがいるんだみたいな(笑)。普通の著者と編集者の関係とは少し違って、すごい不思議な状態だったんです。だからそういう奇妙なスタイルが会社の沈滞しているムードを一気に変えてくれたんですよね。
実はその当時は会社がもう本当に傾いていた時期だったんで、人生崖っぷちだったんです。そんな緊張感の中、彼らを迎えることによって非日常が展開されていたんです。
ーー崖っぷちの中でも楽しそうですね。
そうなんですよね。文化祭やるぞ!みたいな感じのノリで、それに会社の営業部も巻き込まれていって。僕たちはこれでいくしかないっていうことが伝わったし、著者も僕も本気でやったことなんで、それが伝播していったんですね。だから、何かすごい奇跡がいっぱい起こった感じがしますね。
強力でいかれている本
ーー数々ベストセラーがある中で、何か共通点みたいなのがあるとしたら何だと思われますか?
少なくとも売れるものっていうのは、突破力があるものですね。どこか一つだけ強烈な何かを持ってるということですね。明確な情報が切り出せているかは大きいんですよ。
ただ明確なだけではなく、一本何か「完全におかしい」っていう、この本いかれてるっていう感じですね。それぐらいじゃないと本って情報として伝わらないと思うんですよ。書店に数ある、何万点も置いてある中の一冊じゃないですか。それを手に取ってもらうっていうことは、単純に作ってもそれは情報にはなっていなくて、完璧に振り切れていないと手に取ってもらう基準に入らないんですよ。だから、やり過ぎてるぐらいでちょうど良いんじゃないかなと思うんですよね。
ーー良い意味で変わっている本っていうことでしょうか?
そうです。何かこの本、分かんないけど良いよね、みたいなことあるじゃないですか。その内容をデザインに活かして、タイトルにも反映させていくのが編集者の仕事です。
洋泉社
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速読ではなく多読。
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図書館の本は借りないこと?
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よく噛んで飲み込めば栄養たっぷりの読書論
編集者と書き手との対立
ーー『カリスマ編集者の「読む技術」』について聞かせてください。
私の著者としての処女作ですね。
改めて今読み返すと、まだ迷いがあって、戸惑ってる感じがしますね。編集者としての自分と、書き手としての自分が対立していたんだと思います。セールスのことを考えるのは洋泉社の編集者におまかせして、書き手に専念できるように努力したんですけどね、やっぱり編集的になっちゃうんですよ。ここの章は、飽きちゃうから何かサービス作ろうとか。
内容としては、とりあえず今までやってきたことの総決算です。それをただシンプルにまとめよう、と。実用書系とは一線を画すような書き方を目指して書いたんですよね。それが成功したかどうかって言ったら、ちょっとまだ成功したとは言えなくて、とりあえず思いの丈をここに全部入れた感じですね。
独立してからの最初のステップだったので、挨拶代わり、とでもいいましょうか。その当時のもがきが出ている初々しい処女作です。
ーーもともと書くことがお好きだったんですか?
そうですね。さきほども少し触れましたが、編集者をやめたいと思っていた理由は、もともと編集者のタイプじゃないんです。どっちかって言うと、書き手のタイプなんですよ。いや、書きたがるタイプですね(笑)。書くのがほぼ日常化していて、もう独立してから、たぶんほとんど毎日書いてるんですよ。気が付くと作家生活なんです。その霞でもって食べています。








[...] (続く) [...]