
編集経験を活かして
ーー著者の方が適性として合っていると思いますか?
いや、その逆ですね。適性は編集者で、編集は出来るからやってたんですよ。でも、出来ることと好きなことって違ったりするじゃないですか。
そもそも自分で書き始めたきっかけは編集者として感じていたジレンマからなんです。編集ってコントロールできない要素がたくさんあって、例えば、著者に思ってることが伝わらないことがすごく多いんですね。
キャリアを積めば積む程、編集者としての技術は付いてくるんです。でもいろんな著者を担当する中で、自分の成長と、その著者のレベルが必ずしも一致しないんです。編集者はみんなそこで悩むと思うんですよ。それで、妥協点を見つけていって、70点ぐらいの本を作っていくという人が多いんですよ。だから、そのギャップをいかに埋めていくかなんです。
版元で編集者をやっていたときは、編集長をやっていたので、年間自分の担当12本に加えて、部下のを含めると年間40本ぐらい原稿読まなきゃいけないんですよ。そうすると自分の担当分は時間がない中で編集していかなければならなくて、望む完成度まで持ってはいけない。そうすると不満足な作品が世の中にいっぱい出ていっちゃうんですよ。妥協しながら作るというのは思った以上にストレスなんです。だから版元編集者を辞めたというのは必然的な流れでしたね。
クオリティー出版を目指して
ーー現在の編集者としてのお仕事はどうですか?
今はエージェントなんで、何本出すかなんて決まってないんですよね。特に自分の中で本数のノルマを決めてる訳でもないですし。それはクオリティーの高い作品だけを出すっていうことが自分の役目だと思っているので。別に売り上げを上げることが僕にとっての最優先事項じゃないんですよ。
版元にいないから企画やディレクションを任せてもらえないという訳でもないんですよ。実は外部にいても、内部にいても、編集者の意志とか、考えで企画を動かせるんですよ
だから僕としてはフリーという強みを最大限に活かして、時間をかけてでもいいのものを作るというスタイルです。平たく言えば、クオリティー出版ですね。でもやっぱり今の出版事情の中でクオリティー出版を目指すのは、数字が付いていかない限り難しいんですよね。
でもこれからの人に言いたいのは、クオリティー出版なくして、出版業なんかあり得ない! そこからは逃げないでほしいです。体良く売れる企画、著者にくっ付いて、二番煎じ、三番煎じの本を作るぐらいだったら、自分自身がこれは社会にとって、すごく有用だとか、役に立つとか、もしくは役に立たないけどすごいユニークな作品だとかっていうことを自信を持って言えるような企画を出すべきです。

クオリティー出版をとことん追及していきます。
ーー目先の利益ではなく、と。
表面的に売れそうな雰囲気のもので誤魔化したとしても、読者は分かってると思うんですよ。原点に帰るっていうことをやっぱりこれから出版の人たちはやっていかないと、いつか読者がいなくなって、自分で自分の首を絞めることになると思います。
これからますます淘汰されていく時代です。たぶん残っていくのはクオリティー出版をきちんと保てる版元だけだと思いますね。
基礎力の補強
ーー現在注目していることはなんですか?
2009年以降は「正論」がキーワードだと思います。保守化した時代に問われるべきテーマはいかに正論を言えるかっていうことだと思うんですね。そこが売れるコツですよ。
象徴的なのは元自衛隊幕僚長の田母神さんですね。歴史認識について語っていて、一見危ないように聞こえますが、実は軍のトップとしてあるべき姿を単純に言ってるだけなんですよ。実際に講演聴きに行ったんですけど、主張していることが、ほとんど正しいんですよ。元外務省の佐藤優さんもそういうところで受けてるんじゃないかな。
僕も今BPネットで「国語力」というのを連載しているのですが、僕がそこで書いていることは「正論」で、つまり、「文法上の国語を勉強して何になりますか?」ということなんです。国語というものを日常の中でコミュニケーションとして捉えなかったら、国語力は磨かれないし、何の役にも立たない。そういうことを僕は言ってるんです。
ーー基本に忠実に、ということでしょうか
はい。基礎から逃げずに物事をやっていく。国語力でいうところの基礎とは「読む」とか「書く」になりますよね。その基礎力が今の人には圧倒的に足りてない気がします。
そういうと、「えーっ、本を読まなきゃいけないの?」とか、「そんなにたくさん書かなきゃいけないの?」って面倒臭いと思うんです。でも、例えば、スポーツだったら走り込みとか腹筋とか基礎トレーニングをする訳ですよね。それと同じことだと思うんですよ。それがなくて飛躍はないんです。
特に僕が疑問を抱くのが、大学での教育です。大学生の時期に社会人へ向けてのトレーニングってほとんどないんですよ。全く本を読んでいない人が圧倒的に多いんですよ。不思議なことにデータによると小学生が一番本を読んでるんですよ。逆だと思うんですよね。二十歳を超えた後にいかに勉強から学習に切り替えていくのかっていうのが大きなテーマです。
ーー根本的に今の社会人は国語力が足りていないと?
そうでうね。コミュニケーションとしての「読む」と「書く」に加えて「伝える」ってことですが全くできていないです。
僕もそういった教育を受けて来なかったから、すごい試行錯誤して「読む」や「書く」っていうことを覚えました。時間がかかりすぎてしまって、振り返ると非効率だったなぁと思います。20代前半にやっておけば、その後の社会人としての成果は大きく変わったでしょうね。ベストセラーももっと早期に実現していたと思います。







[...] (続く) [...]