ダイヤモンド社 寺田庸二さん

第8回目にご紹介するのは、ダイヤモンド社、寺田庸二さんです。

いまやビジネス書愛読者の中で知らない人はいないであろう、
勝間和代さんの担当編集者。

その他にも『2時間で足が速くなる!』など、ヒット作多数。

重版記録を更新し続けていらっしゃいます。

正確で具体的な数字と多様な擬音語で、
シンプルで筋の通ったお仕事哲学を語っていただきました。




本のトリコになった理由



ーー編集者になられて何年目くらいですか?

今年で13年目です。大学卒業後、日本実業出版社に入社して計8年5か月いました。それからダイヤモンド社に移りました。

ーーなぜ、編集者になりたいと思われたのですか?

僕は小3~中3まで軟式野球をやり、高校3年間は硬式野球、そして大学2年までは体育会で準硬式野球をやっていました。現役で大学に受かった後すぐに入部し、週6日野球漬けの毎日でした。でも、2年生のときにバーニングアウトして部を辞めてしまったのです。そこからいろいろとアルバイトをしたのですが、その中に塾の講師がありました。塾講はとても楽しくやりがいのあるものでしたが、子どもたちの視線は非常に鋭いので、自分の底の浅さを見透かされてしまったのです。それで本を読んでおかないとまずいと思い、読書生活がスタートしました。そうしたら、一気にトリコになってしまい、部を辞めてからの2年間で700冊くらい読みました。

最初は読まないといけない! という義務感で始まったのですが、徐々に本の世界にハマッていきました。実は20歳までまったく読書体験がありませんでした。出版界の人たちは、文学少年、文学少女が多いのですが、僕は夏目漱石の『坊ちゃん』くらいしか読んだことがなくて、初めて出版社に入った当初はすごく劣等感を感じていましたね。

ーーちなみに、どういったジャンルの本を読まれていたのですか?

ノンフィクションがメインです。立花隆さんの『宇宙からの帰還』(中公文庫)や『田中角栄研究』(講談社文庫)などで、小説はほとんど読みませんでした。佐高信さんの『現代を読む100冊のノンフィクション』(岩波新書)の中の本をたくさん読んでいました。

ーーそういう影響があって、ビジネス書をやっているのですか?

就職活動で何社も出版社を受けたのですが、ことごとく落ちて残ったのが日本実業出版社とフレーベル館だったのです。学生時代は経済史のゼミで、ノンフィクションやビジネス書ばかり読んでいたので、自分の興味と知識を活かすうえで日本実業出版社を選びました。フレーベル館に行って「アンパンマン」営業をやっていたら、いま頃どうなっていたでしょうね。



嫌なこともやってみるものです。



ーー新人時代の失敗談や思い出深いエピソードはありますか?

僕は書籍編集をやりたいと思い出版社に入ったのですが、いざ蓋を開けてみたら、5人くらいのチームでやるムック編集部に配属でした。書籍編集をやりたくて、1年間ずっと「書籍に移らせてくれ」と言い続けて2年目から念願の書籍テーブルに行きました。そこで「やったー!」と思った瞬間に、大変な仕事が待ち受けていたのです(笑)。

異動先が「増刷テーブル」と言って、重版のかかった本の校正がメインの部署でした。書籍は重版時に訂正が入ります。そのとき、各編集者が赤字の入った原本を増刷テーブルに持ってくるのですが、それをミスがないように、きっちり最終チェックをするわけです。

付せんだらけの原本とゲラチェックの繰り返し、という僕にとって1番不向きな部署でした。そこに1人、いまから思えば最も感謝すべき鬼上司がいまして、「お前の仕事はザル校正だ!」と毎回私のゲラを見るたびに言われていました。それほど、校正がまったくダメだったのです。それで、「鬼上司」と「増刷テーブル」の二重苦で本当に嫌になって、よくバッティングセンターや深夜の逗子マリーナドライブに行っていました。1日も早く抜け出したかったのですが、そこに1年半いたのです。

でも、嫌なことはやってみるものです。増刷テーブルなので、売れる本だけを集中的に見ることができ、あるときから「何が売れて何が売れないのか」がわかるようになってきました。「半年経って重版」は当たり前で、「3年経って初めて重版がかかる本」に出くわしたことはいま思えば本当にいい勉強でした。いわば「売れるエキス」を2~3年目に体感することで、書店で平積みされている本だけでなく棚にある本をしっかり見る意識はとても強くなりました。そこで身につけたスキルがいま財産になっています。

ーーいまは嫌だと思っていても、続けていればいいことがあるのですね。

そうですね。嫌だという気持ちはよくわかりますが、最初からすべて嫌だと決めつけるのはよくありません。当時は、どうしても結果を早く出したかったので、書店では興味のない棚にもあえて行っていました。自分が興味のない本でも、売れている本はたくさんあります。僕はコンピュータがまるっきりダメだったのですが、あえて嫌いなジャンルから行こうと思い、書籍編集の最初の頃は、パソコン書や理工書ばかりやっていました。

ーー苦手な分野の編集はどうでしたか?

バリバリ理系著者の原稿は非常に理路整然としていて、「これがロジカルってやつか!」と思いました。僕はどちらかと言うと、長嶋茂雄さん的なフィーリング派なので、理系著者とは真逆の性格です。「こんな感じでピュンとパパッと書いてください」と私が言うと、「何言ってるの? この人」と怪訝な顔をされるわけです(笑)。でも、自分と真逆なタイプの著者から学ぶことは多いものです。当時の著者に鍛えられたことを、いまは本当にありがたいと思っています。

ーーいろいろなところに注目されているのですね。

当時は、とにかく「売れる編集者」になりたかったのです。ジャンルは問わずに、自分の興味も関係なくやっていました。

ーー興味がない分野の本を作られるときは、その前に相当勉強されるのですか?

僕は逆に「知らないことを武器」にしていました。ある種の割り切りですが、担当するのがパソコンや理工書の入門書ですから、知らない読者の立場から素朴に聞いていけばいいと思って編集しました。2000年10月に出した、藤嶋昭+橋本和仁+渡部俊也著『光触媒のしくみ』(日本実業出版社)は、光触媒の開発者の藤嶋昭先生に、休日返上で半導体のイロハを丁寧に教えていただきました。著者からは「読者ってそういうことがわからないんですね」と逆に感謝されることも多く、初心者の私とプロの著者がいい形でコラボレートしていきました。私にとってはラッキーでしたね。



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ーー寺田さんの著者に質問するときのポイントは?

5W1H(What—何, Why—なぜ, Where—どこで, When—いつ, Which—どの, How—どうやって)です。僕が「なぜなに君」になって、わかっていてもあえて質問するのです。僕の仕事の大部分は著者への質問です。特に最近はライターさんを交えて3者で話すことが多いので、どれだけ両者をやる気にさせつつ、質問の妙によっていい言葉を拾えるかが勝負なのです。

(続く)

ダイヤモンド社 寺田 庸二さん vol.1

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック2件

  1. [...] その中身は 「短くてわかりにくいメッセージよりも、長くてもいいから読者にとっての便益、メリット、効果をしっかり書きなさい」(その3より) というものです。具体的にこのようにおっしゃっています。 「新人編集者の方は、セオリーに反するタイトリングはある程度点数を重ねるまではあまりやらないほうがいいでしょう。『ザ・コピーライティング』のセオリー通りに愚直にやっていれば、3年目くらいから自分流を発揮して、思い切ったタイトルをつけられるようになるでしょう。そのためにも、ビジネス書の編集者であれば『ザ・コピーライティング』をボロボロになるくらい活用していただきたいです。コピーの「守・破・離」があるとすれば、この本を徹底的にマネて自分の血となり肉とすることで、徐々に自分なりの売れる方程式ができ、売れるタイトルをいつでもつけられるようになります」(その3より) さらにもう一つ、編集者としての大切な仕事の一つである装丁家さんとの仕事進行に関してのアドバイスもいただきました。なんと魔法の一言で、今後の成長具合が決まるというのです。 「会社で1番売れている編集者に、「すみません、今度、先輩が装丁家に会うときに、同席させていただけませんか?」と、言ってみることです。・・・・・先輩の立ち居振る舞いや言動をつぶさに観察できます。ポイントは、その日先輩と別れた後に、「自分だったらこうする」とか、「先輩のよかった点・悪かった点」をメモしてみることです。記録に残さないと、どんどん同席した意味が薄れます。それを何回も繰り返してデータ化していくと、いろいろな共通点が見えてきます。」(最終回より) センスだけではなく、日頃の努力と観察力、地道なデータ管理がカギ握るということ。 具体的でいてシンプルなわかりやすいアドバイスをいただきました。 スカイライターの川辺秀美さんからは国語力に注目したアドバイスをいただきました。 [...]

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