ダイヤモンド社 寺田庸二さん

セオリーに則った、長いタイトル



ーー長いタイトルの本が多いですね。

ジョン・ケープルズ著、神田昌典監訳、齋藤慎子訳『ザ・コピーライティング-心の琴線に触れる言葉の法則-』(ダイヤモンド社)は、全世界で76年読み継がれてきた伝説のコピーバイブルです。

 

ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則
ジョン・ケープルズ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1676



この本をボロボロにやれば、誰でも売れるビジネス書が作れると思っています。436ページで、税込3360円ですが、それが3億円くらいの価値に化ける本です。事実、神田昌典さんも、「この本は全世界で、数兆円の価値を生み出してきた」とおっしゃっていますが、この本に書いてあるのは、「短くてわかりにくいメッセージよりも、長くてもいいから読者にとっての便益、メリット、効果をしっかり書きなさい」ということです。これだけ覚えていても、売れるタイトルはつけられます。

鈴木ゆり子著『専業主婦が年収1億のカリスマ大家さんに変わる方法』(ダイヤモンド社)のタイトルも、キーワードは「専業主婦」と「年収1億」。最後に「方法」とつけているので、『ザ・コピーライティング』のセオリー通りなのです。




専業主婦が年収1億のカリスマ大家さんに変わる方法
鈴木 ゆり子
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 15942




『ザ・コピーライティング』には、「一瞬にして1ドルを17ドルに変える方法」など変化の過程を表現しているコピーがあります。

私が前社時代に企画した、佐藤昌弘著『凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク』(日本実業出版社)で言えば、「凡人が最強営業マン」になるなんてウソだろう? とみんな思うわけです。そこで、最後に「方法」とつけると、どんなノウハウがあるのかな? とつい手に取ってしまいたくなるのです。

「ポン・ピュン・ラン」で「世界一受けたい授業」にも登場した、福島大学陸上部監督の川本和久著『2時間で足が速くなる!-日本記録を量産する新走法 ポン・ピュン・ランの秘密-』(ダイヤモンド社)も、短くベネフィットを表現しています。




凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク
佐藤 昌弘
日本実業出版社
売り上げランキング: 1007




2時間で足が速くなる!―日本記録を量産する新走法 ポン・ピュン・ランの秘密
川本 和久
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 4804








ーー勝間さんの『起きていることはすべて正しい』(ダイヤモンド社)は真逆ですね。


起きていることはすべて正しい―運を戦略的につかむ勝間式4つの技術
勝間 和代
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1425




こういったベネフィットが見えにくい抽象的なタイトルは、著者のネームバリューがないとつけられません。いままでのセオリーにないタイトリングで、内心これで大丈夫かなと、薄氷を踏む思いでつけましたね。

これはいままでの僕のセオリーを完全に破っているわけです。でも、新しい勝間さんの座右の銘で振り子を大きく振らないと、いままでの延長線上の部数しか出ないのではないか。いけるかどうかというよりも、もういくしかない! という感じでした。幸い発刊後の読者ハガキを見ると、「このタイトルだけで買った」という読者の方が多いので、すごくうれしいです。

新人編集者の方は、セオリーに反するタイトリングはある程度点数を重ねるまではあまりやらないほうがいいでしょう。『ザ・コピーライティング』のセオリー通りに愚直にやっていれば、3年目くらいから自分流を発揮して、思い切ったタイトルをつけられるようになるでしょう。そのためにも、ビジネス書の編集者であれば『ザ・コピーライティング』をボロボロになるくらい活用していただきたいです。コピーの「守・破・離」があるとすれば、この本を徹底的にマネて自分の血となり肉とすることで、徐々に自分なりの売れる方程式ができ、売れるタイトルをいつでもつけられるようになります。

ーー勉強も大切なのですね。

そうですね。でも独りよがりはダメです。決断するときは常に周りを見ていなければいけません。やはり、編集者は売れれば売れるほど自信がつくので自分の頭だけで考えてしまいがちです。でも、僕は自信がある本ほど、営業の人たちに「この方向でどうですか?」と聞いてみるのです。自分がこうだ! と思っていても、いろいろな助言でそれがガラッと変わることもあります。矛盾するようですが、「強固な自分の意志を持ちつつ、朝令暮改も歓迎する」という二律背反的な要素を併せ持っておくことが大事なのです。

『起きていることはすべて正しい-運を戦略的につかむ勝間式4つの技術-』のカバーはオレンジ色ですが、当初勝間さんは赤色か白色派でした。

でも、大阪の営業マンが書店に赤とオレンジと白のカバー案を持っていき、半日かけてモニタリングしたところ、圧倒的にオレンジがいいという反応があったのです。結局、書店さんと営業の声を信じて、オレンジにしました。これもやはりチームワークの勝利です。編集者と著者だけで決めていたら、白か赤になっていたはずです。

内心、「オレンジで大丈夫か?」とヒヤヒヤしていたので、「失敗したら営業の責任だからね」と言っていました(笑)。営業も売らなきゃいけないということで相当がんばったようです。そういう駆け引きも面白いですね。

 

小さなことからコツコツと

レッツノートで速攻問題解決

レッツノートで速攻問題解決

ーー寺田さんの必須アイテムは何ですか?

レッツノートです。会社のメールが転送される仕組みになっているので、どこでも仕事ができます。オンとオフが切れないというデメリットはあるのですが、僕の場合はレッツノートが問題を早めに解決するツールになっています。来たメールは生鮮食料品だと思い、どんどんチェックしていきます。

あとは、キーアイテムとしての「万歩計」です。「歩数第一主義」で「1日1万歩」を目標にしています(なかなか行きませんが!)。すると普段から1日1万歩を歩こうと意識するようになります。でも、雨の日やどうしても長く歩けない日もありますから、毎日1万歩歩けなくてもいいのです! 僕は本を1日1冊読むようにしていますが、どうしても1か月で30冊に届かないときもあります。でも、それはそれでいいのです。意識的に1日1冊は本を読むと思っているのかそうでないかで、結果がおのずと違ってくると信じてやっています。

目標は、1日1万歩!

目標は、1日1万歩!

ーー日課を持つということですか?

そうです。全部仕組みにしてしまいます。僕は、古市幸雄著『「1日30分」を続けなさい!-人生勝利の勉強法55-』(マガジンハウス)からヒントを得て、「1日30分」を「1日30回」に勝手に書き換え、「1日30回」それも「1セットのみ」腕立て・腹筋・背筋を始めました。結構長く続いている秘訣は「回数が少ない」からでしょう。無理にセット数を多く設定しても、絶対続きません。自分が続けられる範囲でやっていくことが大事です。

ーー自分の中で決めたルールがあってそれに沿っていく。シンプルですね。

それで結果が出なくてもいいと思っています。結果が出なかったら、何がいけなかったのかをリサーチして次に活かせばいいのです。だから、「編集はセンスだ」と言われますが、そうではないと思います。やはり、「技術と精神」。ビジネス書の場合は「技術」面が特に大きいです。その「技術」は学ぼうと思えば誰でも学べます。あとはきれいな心の著者と、本当に熱く仕事ができるかどうか、それだけです。

自分自身心がけているのは、一発屋で終わらないことです。僕が処女作著者プロデュースにこだわり、03年12月から現在まで「処女作著者連続重版記録9」を更新中なのは、売れるセオリーをしっかり守りつつ、それを添いつつズラす、ということを意識的にやっているからなのです。

僕も、いつか100万部をやってやろうと思っていますが、そこまで売れなくても、会社に財産として残せる本、50年・100年経っても残っている本を作るぞという気持ちも強く持っています。そのためにも、万歩計でしっかり歩くとか、鉄アレーやバッティングセンターで体を動かすとか、コピーライティングをしっかり学ぶといったことを地道にコツコツやるしかありません。それを愚直に続けることで、20万部超2作、10万部超5作、自前企画の生涯重版率8割3分1厘、全処女作著者プロデュース9作連続重版、12作連続重版の編集部記録を成し遂げることができました。20歳まで本すら読んだことのない人間がよくやってきたと思っていますが、これからも自分の成長・進化をテーマに、新しいことにチャレンジし続けたいと思います。

ーーそのスタイルとは?

できるだけ会社にいない時間を大切にしています。みんなに見えないところで何をやるかが勝負です。「あいつ会社にいないけど、何やってるんだろう?」と言われ続けても著者に会い、書店で熟考し、体を動かして五感を鍛える。自由にやるためには地道に成績をしっかり出していくこと。そうすれば周りも応援してくれて、自分のしたいこともしやすくなるといういいサイクルが生まれます。

(続く)

ダイヤモンド社 寺田 庸二さん vol.3

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック2件

  1. […] その中身は 「短くてわかりにくいメッセージよりも、長くてもいいから読者にとっての便益、メリット、効果をしっかり書きなさい」(その3より) というものです。具体的にこのようにおっしゃっています。 「新人編集者の方は、セオリーに反するタイトリングはある程度点数を重ねるまではあまりやらないほうがいいでしょう。『ザ・コピーライティング』のセオリー通りに愚直にやっていれば、3年目くらいから自分流を発揮して、思い切ったタイトルをつけられるようになるでしょう。そのためにも、ビジネス書の編集者であれば『ザ・コピーライティング』をボロボロになるくらい活用していただきたいです。コピーの「守・破・離」があるとすれば、この本を徹底的にマネて自分の血となり肉とすることで、徐々に自分なりの売れる方程式ができ、売れるタイトルをいつでもつけられるようになります」(その3より) さらにもう一つ、編集者としての大切な仕事の一つである装丁家さんとの仕事進行に関してのアドバイスもいただきました。なんと魔法の一言で、今後の成長具合が決まるというのです。 「会社で1番売れている編集者に、「すみません、今度、先輩が装丁家に会うときに、同席させていただけませんか?」と、言ってみることです。・・・・・先輩の立ち居振る舞いや言動をつぶさに観察できます。ポイントは、その日先輩と別れた後に、「自分だったらこうする」とか、「先輩のよかった点・悪かった点」をメモしてみることです。記録に残さないと、どんどん同席した意味が薄れます。それを何回も繰り返してデータ化していくと、いろいろな共通点が見えてきます。」(最終回より) センスだけではなく、日頃の努力と観察力、地道なデータ管理がカギ握るということ。 具体的でいてシンプルなわかりやすいアドバイスをいただきました。 スカイライターの川辺秀美さんからは国語力に注目したアドバイスをいただきました。 […]

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