
データを武器にする
ーー編集者としてやっていくうえで、特性があるとすれば何でしょうか?
僕が1番大事にしているのは体です。「体に聞け」といつも自分で自分に問いかけています。体はウソをつきません。僕は毎日起きたら腕立て・腹筋・背筋をそれぞれ50回×1セット、鉄アレイを1セット、そして素振りを左右打席で20回ずつやっています。僕がやっている朝の行動は本当に苦痛でも何でもなくて、歯磨きの感覚に近いです。その習慣が著者との体感コミュニケーションに生きてくるわけです。取材時はタイミングのよい質問が命ですから、編集者にとってリズム感が欠かせません。私はこれを14年に及ぶ野球生活で身につけてきました。
ポイントは、やったことはどんなに些細なことでも記録することです。読書もそうですが、筋トレや素振りもヤフーカレンダーにその都度書き込んで、あとはしっかり体重と体脂肪率を測ります。こういうことを愚直にやっていくと、何か体で変化が起きたときに何が原因かがおおよそわかってくるのです。
編集者は野球選手と同じで、1番大事なのは風邪をひいたりけがをしないこと。だから常に運動して、いい血液の巡りにして、いいものを食べて、いい心の状態にしておくことが1番大事なことなのです。
運動に限らず、美術館に行ってきれいな絵を見るとか、映画を見てすがすがしい気分になるなど、人それぞれリラックス法は違うでしょう。僕のお薦めは、簡単なウォーキングです。会社帰りや朝に一駅前でおりて歩きながら、「梨の葉っぱが赤くなってきたな」とか「あじさいが咲き始めたな」など、四季をいろいろ感じて五感をフル回転させながら歩くのです。
僕の場合は、ストレスを感じたら、すぐこのバッティンググローブを持って、近くのバッティングセンターに行きます。グアッ~と汗だくになると、デトックス効果で、スカッ! とするのです。

愛用のSSKバッティンググローブ
ーー寺田さんと野球は切っても切れない関係ですね。
先日勝間さんにも、「寺田さんの編集って野球ですよね」と言われて、鋭いなと思いました。目次を作るときにも、僕は野球の監督で打線を組むような感じで作っています(笑)。
野球からは精神面についても多く学びました。攻守の切り替えを常に要求されますから、毎回気持ちをリセットすることが大切です。たとえ売れない本があってもそれを引きずらずに、「次は絶対売れるから」と営業を巻き込むくらいの気合いでやっていくと、社内に熱が伝わり盛り上がってきます。本当に毎日野球をやっている感覚ですね。
ーーしかもID野球ですよね。
そうですね。ID野球をしながら、フィジカルを鍛えるのが好きですね。本の売上データを緻密に分析しつつ、「この著者はまだまだ眠っている才能がある」とか、「もう飽和状態だな」と見極め、いろいろ企画を考えます。1番楽しいのは、処女作著者を発掘・出版し、すぐに重版がかかってビールで乾杯!することですね。
ーー勉強になります。
同じネタを何回も出すマンネリ著者とはできるだけ付き合わずに、処女作著者を担当するのが精神面の修業に1番いいです。自分が料理人として著者の潜在能力をどう料理して行くかという面白さがあります。しかも誰にも制約されませんから、自分のイメージした本ができてきます。
もちろん、それなりのリスクはあります。実績は何もないですから。そして、処女作でこけてしまったら、その後の著者の人生も終わってしまいます。僕の場合はこのいい意味の緊張感が、すべてにいい影響を与えています。
「同席させてください」という魔法のひと言
ーー体調管理の他に、普段気をつけていることはありますか?
あとは装丁をどう作るかですね。これはもう場数を踏むしかありません。正直、著者以上に装丁家とのやりとりが売れるかどうかのカギです。装丁家の人たちはアーティスト。プライドを持ってやっている方が多いので、言葉遣いに気を遣いつつ、自分のやりたいことをハッキリ伝えなくてはなりません。初対面の装丁家の場合、最初の1時間~2時間、相当気合い入れていきますよ。装丁家選びもマンネリにならないよう、できるだけ新規の人を開拓できるようにしています。
新人編集者の方は本当に難しいと思いますので、1番いいのはその会社で1番売れている編集者に、「すみません、今度、先輩が装丁家に会うときに、同席させていただけませんか?」と、言ってみることです。この魔法のひと言を言えるかどうかで、あなたの今後の成長度合いが決まります。
ーー「魔法のひと言」ですか?
そうです。「嫌だよ」と言う先輩はほとんどいないでしょう。先輩の邪魔をせずに隣で静かに聞いているだけで、先輩の立ち居振る舞いや言動をつぶさに観察できます。ポイントは、その日先輩と別れた後に、「自分だったらこうする」とか、「先輩のよかった点・悪かった点」をメモしてみることです。記録に残さないと、どんどん同席した意味が薄れます。それを何回も繰り返してデータ化していくと、いろいろな共通点が見えてきます。装丁家を盛り立てるひと言を最初から言う編集者もいれば、世間話から徐々に話の核心に入る人もいるでしょう。
僕はいつも大型ノートに4色ボールペンで取材メモを作っています。これは齋藤孝さんの「3色ボールペン術」をそのままやっていて、個人的に面白いと思ったものには「緑」、客観的に本当に大事なものには「赤」、まあまあ大事のものには「青」、という感じでメモをしています。バロメーターとしては、取材中にどれくらいの緑があるかで、その本が面白いかどうかわかるのです。その緑の中からオビのコピーも生まれてきます。
だから、編集者はセンスじゃなくて、「技術」だと思っています。いかに、そのときのひらめきを緑のペンで書きなぐれるか。これは正解のない世界ですが、場数を踏むことで技術化できます。そのときの自分のメンタルな状況や体調にも大きく関わってきますから、いつも体をきれいにしておかないといけません。
ーー最後に寺田さんにとって編集者とは?
やはり、編集者は体が第1です。売れる戦略をもって著者をねじ伏せるだけの強さと、相手の痛みやいろいろな可能性を探る柔らかさの硬軟を併せ持つことが必要です。机の上でジッと仕事をしているのではなく、どんどん外の空気に触れて、自ら体感していく姿勢が大切だと信じています。
ーーどうもありがとうございました。







[...] その中身は 「短くてわかりにくいメッセージよりも、長くてもいいから読者にとっての便益、メリット、効果をしっかり書きなさい」(その3より) というものです。具体的にこのようにおっしゃっています。 「新人編集者の方は、セオリーに反するタイトリングはある程度点数を重ねるまではあまりやらないほうがいいでしょう。『ザ・コピーライティング』のセオリー通りに愚直にやっていれば、3年目くらいから自分流を発揮して、思い切ったタイトルをつけられるようになるでしょう。そのためにも、ビジネス書の編集者であれば『ザ・コピーライティング』をボロボロになるくらい活用していただきたいです。コピーの「守・破・離」があるとすれば、この本を徹底的にマネて自分の血となり肉とすることで、徐々に自分なりの売れる方程式ができ、売れるタイトルをいつでもつけられるようになります」(その3より) さらにもう一つ、編集者としての大切な仕事の一つである装丁家さんとの仕事進行に関してのアドバイスもいただきました。なんと魔法の一言で、今後の成長具合が決まるというのです。 「会社で1番売れている編集者に、「すみません、今度、先輩が装丁家に会うときに、同席させていただけませんか?」と、言ってみることです。・・・・・先輩の立ち居振る舞いや言動をつぶさに観察できます。ポイントは、その日先輩と別れた後に、「自分だったらこうする」とか、「先輩のよかった点・悪かった点」をメモしてみることです。記録に残さないと、どんどん同席した意味が薄れます。それを何回も繰り返してデータ化していくと、いろいろな共通点が見えてきます。」(最終回より) センスだけではなく、日頃の努力と観察力、地道なデータ管理がカギ握るということ。 具体的でいてシンプルなわかりやすいアドバイスをいただきました。 スカイライターの川辺秀美さんからは国語力に注目したアドバイスをいただきました。 [...]
[...] (続く) [...]