
自分が楽しんで、読者も楽しめるのが最高
ーー竹村さんに影響を与えた本はなんですか?
「クイックジャパン」を立ち上げたことでも知られる赤田祐一さんの『ポパイの時代』という本です。この本を読んだことも出版業界に入りたいと思った大きなきっかけの一つになりました。
ーーどういう内容の本ですか?
「ポパイ」という雑誌は、時代を変えるような社会現象みたいな雑誌だったそうです。めちゃめちゃかっこよくて、新しくて、その当時の日本にはない雑誌でした。『ポパイの時代』はその創刊に関わってきた人たちのインタビュー集で、ポパイの制作秘話なんかを本当に楽しそうに語っていたんですよね。「あの本が売れてるからマネしよう」という今のような風潮じゃなくて、「自分が面白いって思うことをやっちゃえ」っていう感じで作っていて、「ああ、こんな風に楽しく出来たらいいな」と今でも憧れています。自分が楽しんで、それが読者に伝わって、読者までもが楽しいって最高じゃないですか!
ーー雑誌に行こうとは思わなかったんですか?
雑誌にも興味あります。20代は人脈を広げたり、ネタを集めたりする意味でも雑誌をやってみたいなと思っていました。ゆくゆくは若者が進んで手にとるようなオシャレなビジネス誌を作ってみたいですね。
ーー影響を与えた人はいらっしゃいますか?
文藝春秋の『週刊文春』の元編集長の花田紀凱さんっていう人がいるんですけど、学生の頃からすごい人だなと思っていたんです。それで、大学新聞をやっていたときに取材をさせてください、と手紙送ったんですよ。花田さんは、いくつか雑誌を立ち上げている業界内でも有名なカリスマなので、相手にされないかなって思ってたんですけど、送った次の日ぐらいに、「取材どうします?」って電話がかかってきて、一日密着取材をさせてもらえることになったんです。とても気さくに接していただいて、出来上がった記事を見せたら「もっと面白いことしゃべれたらよかったね」とさえ言ってくださったんですよ。 花田さんは文春の敏腕編集者だったので、怖い人かなって思ってたんですけど、本当に学生の僕にも丁寧に対応してくださって。やはり本当にすごい方というのは、技術だけではないんだな、と感じました。たった一日でしたが、花田さんに多く学ばせてもらいましたし、将来の仕事に対する大きなモチベーションにもつながりました。今でも感謝しています。
時代の空気を読んで、本の「顔」を変える
ーービジネス書作りは楽しいですか?
楽しいです。時代の空気を読みながら、「必要とされているもの」「時代に足りないもの」を探って、本をつくるのはワクワクします。発売後すぐのパブライン(紀伊国屋書店の売上げデータ)を見るときは、市場に受け入れられたかどうかがわかるのでとてもドキドキします。
ーー本を作っているあいだに時代が変わってしまうことはないのですか?
あります。特に昨年の秋を境に時代はガラッと変わりました。ただ、時代は変わっても、多くの人の悩みは大きくは変わらないので、「見せ方」「打ち出し」を変えるようにしています。
たとえば、『残業ゼロの「1日1箱」仕事術』という本は、最初は『夜7時に帰宅する技術』というタイトルで進んでいたんですが、途中でタイトルや文章の空気感を変更したんです。企画したのが去年の秋で、そのときは今ほど不況ではなく、お気楽な仕事術の本も売れていたのですが、制作途中で景気が悪化して、人々の心境が変わったと思ったんです。
リーマンショック以来、「7時に帰宅する」なんて呑気なことを言ってられなくなった。会社側はなるべく残業代を減らして、人を減らして効率的に利益を上げたい。雇われている側は、限られた人員、限られた時間でなるべく多くの仕事をしなければならない。だから、「帰宅する」というプライベートに向かったワードではなくて「残業ゼロ」という仕事の効率化をより鮮明にしたタイトルにしたというわけです。








[...] 版とは紙とインクを除いたら全部「人」です。だから、ゲラに赤字を入れることも編集者にとって大切な仕事ですが、人に会いに行くことが一番大事な仕事かなと思います。」(最終回) [...]
[...] (続く) [...]