
本にとって「人」は、パンにとっての「小麦粉」
ーー必須アイテムはなんですか?
今まで関わった書籍のポートフォリオを作っていつも持ち歩いています。ビジュアルで見てもらうことが一番です。「僕はこういったものを作っています」と手っ取り早く知ってもらうのに役立つんですよ。

自分を知ってもらうのに役立つポートフォリオ
ーーどういったシチュエーションで見せるんですか?
著者に本の執筆をお願いするときや、ライターさんに自分のことを知ってもらうときなどに見せることが多いですね。
ーーやはり多くの方にお会いするんですね?
人との出会いって編集者にとって何より大切だと思います。会社で仕事をやるよりも飲みにいくのを優先させたい、と思ってるくらいです。飲むのも仕事。それをわかっていただきたい。 「人に会うこと」は、パンでいう小麦粉などの「原材料」なのかなと思っています。出版とは紙とインクを除いたら全部「人」です。だから、ゲラに赤字を入れることも編集者にとって大切な仕事ですが、人に会いに行くことが一番大事な仕事かなと思います。

出版業界の様々な人をつなぐ
そんな考えもあり、『Editor’s Hub』という大規模な会を企画しているんです。出版業界とそれを取り巻く人たちが気軽に集まって情報交換をしよう、というのが趣旨です。前回は160名くらいの編集者さん、ライターさん、デザイナーさん、イラストレーターさん、書店さんが集まりました。
「うちの会社は給料が……」とか、「あそこの出版社はそろそろヤバい」とか言うのではなく、出版界全体が沈んできているので、そこはいがみ合うのではなく、オープンに話して、お互いのいいところを補い合ってやっていく段階に来ているのではないか、と思います。
何にもできない、何でもできる人
ーーこれから出る本でオススメはなんですか?
全部オススメですが、この秋に『あきらめることから始めよう』(仮タイトル)という本が出ます。みんな「夢をあきらめるな」と言われるのが当たり前の世の中で、苦しんでいる人が多いんじゃないかと思ったんです。「あきらめる」っていうのは仏教用語でいうと「明らかにする」という意味。ギブアップという「敗北」ではなくて「現状を明らかにする」ということなんです。
例えば、就職活動で志望する企業に入れなかったとします。そこで悩むっていうのは、落ちた自分を「受け入れられない」ということですよね。グジグジ考えるのではなく、自分の現状を白日の下にさらして、「落ちたのはもう事実なんだから、そこを前提にして生きていきましょう」というのが「あきらめる」ということ。「あきらめる」といった一見後ろ向きな言葉を新感覚でポジティブな感覚で一冊にまとめたいと思っています。
ーー著者の方はお坊さんなのですか?
そうなんです。とてもユニークなお坊さんですよ。著者のお父さんがお寺をやっていて、それを継いだときに、「仏教を若い人にも広めるにはどうしたらいいのか」「もっとラフに仏教に接してほしい」という思いで、寺院に立派なプラネタリウムを作って、そこでプラネタリウムを見せながら仏の教えを説いたりされている方です。
ーー最後に「編集者」ってどういう人だとお思いですか?
「何もできないけど、何でもできる人」でしょうか。実はこれは菅付さんというスーパー編集者の受け売りなんですが。
編集者はデザインも中途半端だし、書くのも中途半端だし、イラストも中途半端という「何もできない人」です。だけど、いろんな人の力を結合させることによって「何でもできる」人になれる。世界中に散らばっている「力」を見つけて、一つのテーマに沿ってそれらをつなげる「ハブ」になることで、それぞれの力が何倍にもなって輝くんです。そういった可能性を生み出す職業ではないでしょうか。
ーーどうもありがとうございました。







[...] 版とは紙とインクを除いたら全部「人」です。だから、ゲラに赤字を入れることも編集者にとって大切な仕事ですが、人に会いに行くことが一番大事な仕事かなと思います。」(最終回) [...]
[...] (続く) [...]