日本実業出版社 滝啓輔さん
日本実業出版社 滝啓輔さん

日本実業出版社 滝啓輔さん

第十回目にご紹介するのは

日本実業出版社、滝啓輔さんです。

てっぺん!の朝礼』、『頭のいい段取りの技術

などのヒット作を担当されています。

オリジナルの仕事哲学をわかりやすく順序立てて語っていただきました。

「出版」のイメージそのままだった編プロ時代



ーー編集の仕事を始められてからどれぐらいですか?

新卒で編集プロダクション(編プロ)に入社して、そこで3年半働いていました。今の会社に移ってからはもう5年目になりますね。なので、今は編集者歴8年です。

ーー新卒で入られてからずっと編集を担当されているのですか?

はい。しかもずっと書籍編集ですね。編プロは普通雑誌や企業の広報誌、webのコンテンツなどの制作が多いと思うんですけど、最初の会社が珍しくほぼ書籍だけで仕事を回していたんですよ。だから、8年間本だけを作っている生活が続いています。

ーー実際に出版業界に入ってみて、ギャップは感じましたか?

編プロという業態をよく理解していなかったので、会社に営業などの部署がなく、ほとんど編集者しかいないのが、ギャップと言えばギャップでしたね。けれど、もともと編集志望だったので、編集の仕事に専念できるという意味ではよかったです。

逆に、とにかく仕事が忙しいのと、お酒を飲む機会が多いという点では、僕の抱いていた「出版」のイメージ通りでした実は僕の亡くなった親父も編集者で、著者の方々などと飲んでばかりいた人だったらしいので。その意味では、今いる日本実業のほうが、効率的に仕事をして残業しない人が多いですし、それほど外に出て飲んだくれる社風でもないので、むしろ転職後のほうがギャップを感じたかもしれません(笑)。

ーー編プロから出版社に移られたきっかけはなんだったんでしょうか?

これはダイヤモンド社の和田さんもインタビューでおっしゃってましたが、編プロはどうしても「作る」という川上の作業しか担当できず、「売る」ことにまで責任を持てませんよね。また、ハードワークの日々が続くことにも不安を感じました。仕事がだいたい深夜2時ぐらいに終わって、それから飲みに行くみたいな日が多かったんですよ。

そんな生活が続く中で、自分のキャリアを考えたとき、ずっとこのままでいいんだろうかと疑問を感じたんです。自分の作った本がどのように売られるのかもよくわからずに、毎日仕事に追われ、狭い人間関係の中で一日が完結する。出版社が「本土」だとしたら、自分は遠く離れた「離島」に閉じ込められているよう閉塞感がありました。

ーーでは、転職活動は積極的にされたんですか?

正直に言うと、積極的にも何も、転職活動を始めざるを得ない状況だったんですよね。もしかすると見た目とギャップがあるかもしれませんが、僕は自分の意見をかなりはっきり言ってしまうほうなんです。で、その性格が仇になりまして。僕が当時いた編プロでは社長の意見が絶対で、本のタイトルも全て社長が独断で決めていたんです。けれど、編集者からしたら、自分が企画を立ててとってきた原稿なら、社長よりも自分のほうが絶対、原稿にマッチしたタイトルがつけられるのに、と思うこともあるんですよね。今振り返れば、「余分な思い入れがないからこそ、つけられるタイトルもある」というケースが存在することもわかるんですが、当時はそこまで冷静に考えられませんでしたね。だから、社長のつけたタイトルにもよく反論したりして、彼からすれば、反抗的な新米編集者だったと思います。

社長と僕との張りつめた関係が他の社員に迷惑をかけていたことは自覚していました。加えて、さっき言ったような不安もあり、ある日、 転職先も決めないで辞めてしまいました。日本実業は実は転職活動を始めて1社目で受かってしまったんですよね。だから、1ヵ月ぐらいしか活動していないんです。日本実業に受かったのは、編プロでひたすら本を作ってきた経験をプラス評価していただけたのかなと

ーー実務経験を武器にされたのですね

そうですね。雑誌やwebの一部分の編集・ライティングではなく、丸々一冊担当しましたという経験が、書籍の編集を大きな柱としている今の会社には魅力的に映ったのかもしれません。



編集者は「真ん中」の存在



ーー忘れられない失敗はありますか?

一口に「失敗」と言っても、ケアレスミスから取り返しのつかないようなものまで、色々ありますよね。その中でも自分にとって忘れられないのは、ある売れなかった本のことです。僕の担当した中で、中身はよくて、手応えもあったのに、予想を裏切ってあまり売れなかった本があるんです。それは今思うと、本作りの際、著者の方のいうこと、思いだけを重視してしまって、読者の方の視点をちゃんと意識してなかったのが原因でした。作り手の側だけで盛り上がって仕事を進めて、いざ出版した後に、これは誰が読むべき本だったんだろうって、非常に初歩的な疑問が出てしまったんですよね

経験上、受身になって著者の方だけに合わせすぎると良くないんですよ。編集者はやはり真ん中の存在だと思います。著者と読者、また両端には書店や出版社の営業が入る場合もあります。いずれにせよ、どんな場合でも常に真ん中にいることを忘れないことが大切で、一方に偏ってはいけません。

これは、僕がいうことではないかもしれませんが、他の「もの作り」の世界でも同じようなことがいえると思うんです。たとえば家具のデザイナーさんは各自こだわりをもってやっていらっしゃると思うんですが、それが先行しすぎると、普通の人が普段の生活の中でストレスなく使えるものとは、かけ離れてしまうかもしれませんよね。自分がすごいオシャレなもの作れますっていうことを主張したいだけであれば、それは「アート」の世界だと思うんです。「商品」を作るなら、こういう言葉は好きでないですが、やはり「エンドユーザー」のことを考えるべきだと思います

本でいうなら、企画を考える、タイトルを付けるという過程で、「自分たちはこんな本が作りたい」という発想と同時に読者だったらこんな本が読みたいはずだ」っていう視点を併せ持って作らないといけません。誰のために作っているのか、誰からお金をもらっているのかというと、結局読者の方なんですよね。その視点を置き去りにしてしまうことは、誤字脱字や著者の方との行き違いよりも、編集者にとって本当の意味での失敗ではないかと思っています。なので、読者目線でいることは常に心がけています。

(続く)

日本実業出版社 滝 啓輔さん vol.1

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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