

「目標をいかにして達成するか」という可能性を考えることを学びました。
できない言い訳より、
「できる方法」を探す
ーー 一番影響を与えた方はどなたですか?
会社の上司や先輩、他社の編集者やデザイナーさんなど、影響を受けた人を挙げればキリがないのですが、一番影響を受けたのは、やはり著者の方々ですね。仕事のやり方といったことにとどまらず、精神面までも成長させてもらいました。さきほどいったように、中身があるいい本、売れる本を作るために、本気でぶつかっているうちに、知らず知らず影響されています。特に、僕がお仕事をすることが多い経営者の方って、自分がやりたいことを絶対に実現させてやるぞっていう気持ちを誰よりも強く持っていて、感化される部分は大きいです。
ーーモチベーションの高さに憧れるということですか?
う~ん、モチベーションの高さというより、ゴールにたいする執着心の強さにひかれるといったほうが正確ですかね。自戒を込めていうんですが、社会人になると言い訳がうまくなることがよくあると思うんです。何か新しいこと・困難なことを目の前にすると、これは技術的な問題でできませんとか、それは会社としてやっぱりできませんとか、あるいはコストの関係できませんっていう言い方をついしてしまう。もちろん、仕方がないケースもあるでしょうが、そういう言い訳をずっとしていると、そのうち「できない」っていう言葉が口癖になりかねないと思っていて。
でも、経営者の方って、同じようなシチュエーションのとき、できない言い訳よりも、できる方法を探すんですよ。もちろん、彼らにだって最初はできないかもって不安になるようなこともあると思うんです。けれど、そのときに、「ああいうやり方ではできないけど、こうしたらできるんじゃないか」と代替案を探したり、あるいは彼らの最初のゴールから少しずれていても、「このゴールを目指せば、結果として得られるものは同じなんじゃないか」と発想を転換したり、ゴールへ向かって前へ前へ進んでいく力が本当にすごいんです。
企業のトップである経営者が「できない」っていったら、それはその会社にとって動かしようがない結論ですよね。それもあってか、彼らはできる方法を真剣に探している。そういう人たちといると自分も頑張って可能性を探さないとという気になりますよね。そんな前向きな考え方ができるようになれたのは、やっぱり著者の方々のおかげだと思います。
ーー確かに、できない、できないっていいがちですね。今、振り返ってみました(笑)
もちろん、すべてのことができないといけない、というわけではないと思うんです。要は、「本当にできないのか?」って自問する癖をつけることですよね。自分を振り返ってもそうですが、色々考える前に条件反射で「できないです」っていってることも多いかもしれない。その意味で、自分が自分にブレーキをかけていることもあると思うんですよね。
日常を「トルツメ」で考えない
ーー今後、何か作ってみたい本のテーマはありますか?
こういう時代なので、読者が何にすがろうとしているのか気になっています。最近のビジネス書を見ていると「お金」に関する本がすごく売れているんですね。先行き不透明な時代の中で、そういうときに、人は何に頼ればいいのか?その一つの答えがお金だと思うのですが、そういう観点から、それ以外にも読者にとって「お守り」になるような本のテーマはあると思います。これはビジネス書に限ったことではなくて、「宗教」や「笑い」「感動」など、色々な形のお守りを、僕ら編集者は提供するべきではないでしょうか。

あたたみのあるメッセージ伝達ツール
ーーでは、ご愛用のグッズ見せて頂けますか?
何をお見せしようか迷ったんですが、一番自分らしいものはこの猫の便箋だと思います。実は猫が大好きなんです。かわいくて、なごみますよね。人に本を送るときや、何かお礼の気持ちを伝えたい時、こういった便箋、一筆箋を選んでいます。犬派の人にはかえって迷惑かもしれませんが(笑)、封筒を開けたとき、少しでも楽しい気持ちになっていただけたらいいなと思って。
また、これは徹底できているとはいえませんが、仕事関係の人だからといって、仕事の話ばかりを書かないように気をつけています。その人が書いているブログのことや、あるいは以前飲んだとき盛り上がった話でも何でもいいんですけど、一文でもビジネス以外の話を書き添えたいなと。それは便箋選びにも通じますが、「ちょっとだけ手間をかける」気遣いって、編集、本作りに必要なんじゃないかなって思うんです。
校正の用語で「トルツメ」(不要な一文、言葉をとって、後の文章を詰めること)という言葉があるんですが、日々仕事に追われていると考え方までトルツメになってしまうような気がして。日常において無駄だと思うことを、どんどんどんどんトルツメしていくと、今いったような気遣いまで失われてしまう気がするんですよね。例えば、本を送るときにも味気ないプレスリリースをつけて終わり、みたいな。それはあまりにツメすぎじゃないかなって思うんです。「効率化」が叫ばれる時代だからこそ、ツメすぎない余裕を持っていたいですね。
編集者とは「生き方」である
ーーそれでは、最後に滝さんにとって編集者とは何ですか?
その役割に注目して考えると、「医師」と「薬剤師」をあわせた存在でないかと思います。ビジネス書に限っていえば、仕事や人生の「不調」を訴えている人に、どんな薬(本)を処方すればいいのかを決め、実際に作る。そして、その薬の成分が著者の方の経験や考え方ということになります。僕らの最終的な目標は患者さん(読者)の病を治したり軽くしてあげることなんです。自分が作った本にそれだけの効力があるかどうかはわかりませんが、仕事や人生の悩みを少しでもなくす手助けがしたいと思っています。
もう一つ、全然違った観点でいうと、編集者ってただの職業ではなく、生き方だと思うんですよ。何時から何時までの間だけ編集者と思うんじゃなくて、つねに編集者という人生を生きていると考える。そうすると、普段の生活自体が変わるはずだと思うんです。そうやって生きていれば、街を歩いていても、電車に乗っていても、仲間と飲んでいても、本作りのヒントが見えてくるんじゃないかな。そういう意味でオンとオフという考え方はしないですね。これは別に編集者だからそうだというわけではなくて、例えば、デザイナーであっても、コンサルタントであっても、あるいは営業や経理といった部署にいる人でも、同じではないでしょうか。自分は○○という職業なんだ、ではなく、○○という生き方をしている、と思った瞬間から、自分の目に入るものが1ミリでも違って見えてくる気がします。
今、男性でも女性でも、仕事をしている時間が生活の中で結構な部分を占めている人が多いですよね。そうである以上、仕事がつまらなかったら、人生もつまらないと思うんです。個人的には、仕事の悩みやそこで感じた悔しさは、全部仕事でしか取り返せないと思っています。仕事の悩みはもっとよい仕事をすることで解決したいし、それを手助けできるのがビジネス書の編集者の醍醐味といえるはず。そんなことをつねに考えているので、寝ているときでも、つい本の夢を見てしまったりします。担当の本が発売日に出ないとか、売れないとかといった悪夢も何回も見ました(笑)。でもそういう日々は辛くないですね。「編集者という生き方」を選んだのは自分ですから。
ーーどうもありがとうございました。







[...] (続く) [...]