
一冊の中に世界を見立てる
ーーベストセラーに共通することがあるとすれば、なんでしょうか?
世界観があることじゃないでしょうか。タイトルが面白いとか、装丁にインパクトがあるとか、著者にバリューがあるとか、有名人が推薦しているとか、そういう断片的なパーツだけをただ無計画に寄せ集めてもダメで、それらを貫き通す世界観がないと、読んでいても面白くないと思うんです。
もちろん、タイトルや著者名だけで売れることもあるんですけど、でも、そういうものに頼らずに、本自体が力を持って売れているときは、その本の中に、ワクワクして次のページをめくりたくなるような世界が広がっていますよね。タイトル、帯のコピー、装丁、造本、著者プロフィール、もくじ、文体……それらに一貫した流れがあって、メッセージを伝えている……それが、その本を読んでほしい読者に訴求していくんだと思っています。
たとえば『夢をかなえるゾウ』だって、クラフトのカバーに前衛的な動物のイラストを装画にしたらベストセラーになるかっていうと、そうじゃないですよね。あのカバーが絶妙に内容を体現していて、かつ増幅させているから、あの本は独特な存在感を出しているわけです。
ーー世界観は、どうやってつくるものなんでしょう?
著者の方がもともと強烈な世界観を持っている場合もあれば、編集者が原稿を整理したり、著者と話し合ったりしながらつくっていく場合もあります。
後者の場合でも、ゼロからつくるというよりは、「見立てる」感覚です。著者とのコミュニケーションや原稿の中から材料を集めて、その本のなかで打ち出す世界観を見立てていきます。
本の世界に読者を誘うのは、表1カバー
書籍において、まず読者の目に入るのはカバーですよね。そこで、その本の世界に読者を誘おうと思ったら、表1カバーという限られたスペースに、読者がすっと入り込みたくなるストーリーを用意できるかどうか、ここにかかってくると思うんです。
ーー装丁はやっぱり大事なんですね。
そうですね。たとえば自分の担当した本でいうと、『「仕組み」仕事術』。
この本は、「仕組み」というメインタイトルのキャッチーさもありましたが、同時に、帯の次のフレーズが効いていたと考えています。
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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「5つの会社を経営し、世界を飛びまわりながら
仕事は毎朝2時間で片づけ
週末はサーフィンを欠かさない著者が教える
“それでも結果が出る”仕事の技術」
「仕組み」という言葉だけでは漠然としたイメージしか湧かなかった人でも、このフレーズと、最少の時間と労力で最大の成果を出す」というサブタイトルから、この本全体のストーリーが見えてくると思うんです。そして、自分もそういうように仕事がしたいと思って、この本を読んでみたくなる——という流れを想定しました。
その本が書店に並ぶところまで考える
ーーカバーや帯にストーリーをつくるのですね。
書籍って、買うときに中身を全部読めないじゃないですか。目次と前書きくらいをざっと眺めて、あとは全体をぱらぱらめくって雰囲気をつかむ程度で、それ以上の中身は、基本的によくわからないまま買いますよね。そこで、カバーや帯がどんな顔をしているのか、つまりは表1が通りすがりのお客さんにどれだけの世界観を語りかけることができるのかが、すごく大切になってくると思うんです。
ーー装丁へのこだわりについて教えてください。
装丁がどうなるかは、デザイナーを誰にするかで7割決まってくるんじゃないかと、勝手に思っています。その本が提示する世界観や読者層にぴったりはまるデザイナーに依頼することは、最初にお話しした音楽の話でいえば、バンドのメンバーを選ぶのと同じくらい重要なことで、上手い人を連れてくればいいとか、売れている人に頼めばいいとか、そういうのはちょっと違うと思っちゃう。それよりも、その本の打ち出そうとしている世界観との相性を重視しますね。
ーー装丁の仕事を進めるときのポイントは何でしょう?
本を作ってるときって、どうしても、その本だけに集中してしまうんですけど、読み手にしてみれば、その本は、何百冊、何千冊の中の1冊。読者だけじゃなくて、書店さんだってもちろんそう。だから、その本の内容や世界観に合った装丁にすることはもちろん大事なんですが、それと同時に、「書店の棚に並んだときにどう見えるか」ということを、徹底的に考えます。
ディスカヴァーの場合はカバーも編集部でみんなで考えて、これはちょっと渋すぎるとか、ここはもうちょっとこうした方がいいねとか、類書に似ているから変えようとか、みんなで知恵を出し合って、いい方に調整していきます。
ーー会社の中で意見交換をしているんですね。書籍編集は、ひとりで行うものというイメージでした。
そうですね。基本的にひとりが1冊を担当するというのは他社さんと同じですが、小社は、デザイナーの選定や、書名、カバーラフといった事柄は、そのつど編集部の会議で検討するようにしています。営業に意見を求めることも多いです。ディスカヴァーは会社がひとつのブランドだと考えているので、会社のカラー、ポリシー、考え方といったことを全社員で大事にしているんです。








[...] (続く) [...]