ダイヤモンド社 加藤貞顕さん

「わかりやすい」、「傷つけない」表現



ーー編集者にとって大切なことは何ですか?

それは「表現」に気をつけることだと思います。わかりやすさもそうですし、あとは人を傷つけないようにということも大事です。例えば、コンピュータ書をコンピュータにくわしい人が書くと、どうしても文章が上から目線な雰囲気になりがちです。そうすると読み手は、情報は得たとしても、同時に少しだけいやな気持ちになったりします。

最初に入ったアスキー時代の上司がそういうことにとても気を使う方で、原稿を本当にたくさん直されました。わかりやすいか、わかりにくいかだけではなくて、こうすると読んだ人が嫌な気分になるのではないかという視点は大事だと思います。

現在でも原稿を読むときは、ほんとうにひとことレベルでそこは気にするようにしています。「これはわかりにくい」「これは誰かが傷つく」「もっとポジティブな言い方はないか」などと考えます。これはマス・コミュニケーションに携わる際の、必要条件のひとつだと思います。

ーーそれを身につけるためにはどうしたらいいでしょうか?

やっぱり、本はたくさん読んでおいたほうがいいとは思います。あと、すごく好きな分野や、得意な分野があるといいですね。その分野と自分が勤める会社の進みたい方向とが一致すれば、仕事もやりやすくなります。

あと、これはできればなんですが、新人のころに雑誌作りの経験ができるといいと思います。例えば月刊誌なら、毎月企画を立てるところから始まり、社内の会議を経て、デザイナーさん、イラストレーターさん、カメラマンさんに発注をして、進行管理をして、入校、校正をして本が出て、反響も毎月見られます。仮に1カ月に3つの企画を受け持つとすると、1年に36回の成功や失敗を体験できるのです。

さらに、1年だけでなく数年くらいやれるとさらにいいと思います。なぜなら、どの雑誌でも年間のサイクルというものがあります。例えば、春に新生活を迎える人用の企画、夏は夏休み向けの企画、秋にはグルメ…と季節ごとに似たような企画をまわしていくことになります。けれど、毎年同じ企画を使い回すことはできません。そうやっていくうちに、同じトピックを違った切り口で扱う方法が身に付いていきます。また、雑誌編集は見出しを本当にたくさん立てなくてはいけないので、コピー力を鍛えるいい訓練にもなりますね。

いま僕は書籍を担当していますが、書籍の場合は担当編集者がその本の編集長のようなものです。自分で一から作り上げるというとき、振り返ってみると、雑誌での経験が基礎となって、いまの書籍作りを大きく支えていることに気づきます。最初に雑誌を経験しておいて本当によかったと思いますね。



意外性のあるタイトル・デザイン



ーー本を作るうえでのこだわりはありますか?

タイトルとデザインはけっこう力を入れています。とくに重視しているのは、他との差別化ですね。率直に言って、本のデザインはマネしあいが多いのです。たとえば『金持ち父さん貧乏父さん』という大ベストセラーがあります。それ以降のお金の本は、あれと似たクリーム色とか白のやわらかな表紙の本が増えました。もちろん、お金本のターゲットは年配の人が多いので、やさしめのデザインが多くなるのは必然的な流れでもあるのですが、やっぱりそれではおもしろくない。

ですから『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』という本をつくるときは、内容に少しブラックなネタも入っていたこともあって、王道の逆をいこうと思いました。







カバーの色を、黒を基調にしてみたんです。それだけだとダークな雰囲気になるので、デザインは格調のあるものにします。キツい感じにならないように、タイトルに遊びのニュアンスを入れて、しかも書体を箔押しにして、「ムダに豪華」という演出にしてやわらげました。

あとは『スタバではグランデを買え!』という本も、意外性のあるいいタイトルにできたと思います。




スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
吉本 佳生
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 2761




普通、スターバックスでは、グランデという大きいサイズを注文する人はあまりいないのですが、「常識の逆」を言っていて目を引くことができます。もちろん、それだけではただの不親切になるので、きちんとどういった本なのかは「価格と生活の経済学」というサブタイトルで説明しています。意外性と本筋の説明がカバーの中に収められていることがポイントですね。デザインもわかりやすく、クールで、おもしろみのあるものにしかったのですが、うまくできていると思います。そこは本当にデザイナーさんに感謝してもしきれませんよ。

タイトルは、毎回、四苦八苦していますね。もうほんとに悩み抜いて悩み抜いて決めている場合が多いです。だいたい1冊につき、最低でも100個は考えるようにしています。前はその数倍は考えていたのですが、最近根性がなくなってきました。

(続く)

ダイヤモンド社 加藤 貞顕さん vol.4

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック2件

  1. 水野隆張 より:

    お久し振りです。元パソコン師匠の弟子入りした水野です。
    もうすぐ後期高齢者75歳になりますがまだピンピンしております。
    上記ウェブサイトに中小企業診断士仲間と中国に関する情報を掲載しており私はその事務局を務めております。このようなものを出版する事は無理でしょうか?コメントをお願いします。
                             元パソコン弟子の水野隆張

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