
「客観視」することも大切
ーー今、本を作るうえで、大切にしていることは何ですか?
自分の言葉で綴ることや、自分の考えをしっかり明示することですかね。今、ネットやフリーペーパーの隆盛で、情報がどんどん無価値の方向に行ってますよね。だから書籍に求められるのは、そこでしか読めない意見だと思っています。
あとは、客観視することですかね。自分の意見や考えは大事だけど、それが商品になっていないことには、仕方ない。Aということを言いたい場合、それをどうすれば買ってもらえる商品にできるか。そういったちょっと離れた場所からの思考も、大事にしています。
ーーブログでもそうですが、自分の意見にこだわりがあるようですね。
そうですね、そこが面白さの源泉のような気がしているんですよ。例えば、ブログなんかでも、聞いたことをそのまま受け売りで書いているような人より、少々拙くても自分の生活に照らし合わせて私見を書いているほうが絶対に面白いですから。
ーー岡部さんが、自分の意見などにこだわりを持つというのは、今の出版界がそういう状況とは違うってことがありますか?
ま、あくまで僕の感じるところですが、企画をデータ主導で作りすぎているようには思います。「これが面白いんだよ!」とか「楽しいよ!」って情熱よりも「こうすれば売れる」とか「この著者なら売れる」ってことが、第一義すぎるような……。もちろん出版もビジネスですから、そういった売れるための戦略を立てることは重要ですが、あまりに各社の企画が横並びすぎってのは感じますね。
ーーデータ主義が原因だと?
データも使い方だと思うんですよ。上手に使っているところもありますからね。だた、データに支配されすぎて、編集者の大切な企画力とかそういった部分が弱くなっているように思います。逆に売れるための方法論ばかりに聡い人が多いような……。
ーー売れるための方法論?
売れている本のデータと、売れっ子の著者やデザイナー。そういったデータから見えるものばかりを、つなげていけば、なんとなく売れる本が作れてしまう。もちろん、そういったことも大切だけど、そればっかりじゃツマラナイ。それにそういった方法論に従えば瞬間的に売れる本は作れるけれど、新たな人材を発掘したり、新しい価値観を提案できるってことは別問題だと思います。 「編集者」というのは情報と人、人と人とを繋げて新しいものを作る人だと思うんです。そのためには「何が面白いか」を考えることは必要不可欠だし、そこが編集者という仕事の醍醐味ではないでしょうか。だから若い編集者の人には、外からのデータだけではなく、自分の問題意識や興味といった内側から本を作ろうという気持ちを持ち続けてほしいです。
届けたいメッセージを売れるようにするのがプロの技
ーーでも必ずしも自分の問題意識や興味が売れるものになるとは限りませんよね。
そうですね。自分の問題意識や興味から企画を立てて編集したものでも、上司に見せたら「こんなの売れないからだめだ」と最初は言われてしまうかもしれません。でも、そういう企画をどんどん自分の中でストックすることはとても大切だと思いますよ。売れる売れないというのは、時代と密接にリンクしているから「今はダメでもいつか」って気持ちを抱いておけばいいんです。ひとつの企画は大切にするべきだけど、あまりこだわりすぎてもいけない。そこはバランスです。
会社で働く以上、自分の意思だけでは本を作れないし、決まった本数と売り上げも出さないといけない。だから、売ることに徹してある程度結果を出していく。そうしたら、監視の目もゆるくなって、三冊に一冊ぐらいは自分が楽しんで作れる本が出せるようになるのではないでしょうか。とにかく、最初は自分の企画が通らなくても、折れずに面白いものを作ろうという気持ちを持ち続けることが大切かと。
そして、編集者としての経験値をあげていけば、企画はネタも大切だけど、それ以上に「いかに作るのか」ってのが大事ってことがわかってきます。極論すれば売れないテーマはなくて、すべてやり方次第なんですよ。







[...] (続く) [...]