
帯で差をつける
ーー新書の特徴とは何ですか?
まず見た目でいうと装丁の差がほぼないに等しいということですね。とくに同シリーズ内では著者名とタイトルが違うだけと言っていいでしょう。装丁で差がつかないとなると、帯が重要になってきます。PHP新書の場合は、タイトルの位置の関係で帯の幅を広げるには上限があるのですが、他社さんの新書の帯幅はどんどん広くなってきています。帯が半分以上を占めているものも、めずらしくなくなりました。
あとは帯の色選びも重要で、一時期黄色がとても目立っていました。内容のイメージを色に反映させるときもありますが、書店で本を手に取る読者は、本の内容についてはまだ知らないわけですから、あまり内容に引っ張られすぎないようにしています。僕は本作り全体を通してシンプルなものが好きで、書体は基本的にリュウミンと決めていますし、タイトルも短いものが好きですね。やっぱり新書は中身で勝負ですから。
ーー中身にはどんな特徴がありますか?
いま教養新書は転換期を迎えています。昔は教養新書というと、硬派な内容がコンパクトにまとまっていることで読者の支持が得られたと思うんですが、創刊ラッシュのあと、現在は発刊点数も月140点とずいぶん増えて、だいぶその枠組みが変わってしまいました。一部の新書愛読者の方には、新書市場が荒れている……ようにも見えるようです。
ーー荒れているとはどういうことですか?
新書はもともと、教養新書と実用新書、そしてノベルズといったジャンルに明確に分かれていました。ところが、ここにきて教養新書の枠のなかに実用新書的なものがどんどん入ってきています。一部小説も入ってきていますから、まさに「なんでもあり」といった状況です。PHP新書でいえば、13年前の創刊時に比べて読者層も広がって、ビジネスマン向けのラインナップがずいぶん増えています。実はこのように教養新書の読者層を広げるというのは、PHP新書の隠れコンセプトでもありました。
でも、門戸を広く構えるために、内容を入りやすくわかりやすくすると、同じ教養新書でも印象が全然変わってくるんですよね。今までのコアな新書の読者からしてみると、読み応えがないと思うのは当然のことで、賛否両論はもちろん覚悟の上で作っています。ただ、より多くの人に役立つ情報を提供できて、読者がそこから何か学びとっていただけるなら、従来のジャンルに固執する必要はないのではないでしょうか。いかに読みやすくするかという観点は、これからの新書にとって不可欠だと思います。
専門家が専門外のテーマを書く
ーー読みやすくなったというのが新書の特徴ですか?
そうですね。これまではあるテーマの新書をつくる際には、そのテーマの切り口の斬新さというのが、非常に重要だったと思うんです。テーマの扱い方に、著者も編集者も腐心しました。でも現在は、いかに読みやすくするか、いかにわかりやすくするかのほうに、より知恵を絞っているのではないかと思っています。
ターニングポイントはおそらく、新潮新書創刊の頃だと思います。ベストセラーになった養老孟司さんの『バカの壁』を読んでそう思いました。もう一つ、売れている新書に面白い傾向があるなとおもっていたのですが、ある分野の第一人者が、専門外のジャンルについて書いたものが大ベストセラーになっている傾向があるのです。たとえば、400万部を超えた『バカの壁』はコミュニケーション論と言っていいと思いますが、著者の養老さんは解剖学者です。PHPのベストセラー『頭のいい人、悪い人の話し方』も、250万部の大ヒットだったわけですが、著者の樋口裕一さんは予備校の小論文の名物講師だったんですよね。最近では、姜尚中(カン サンジュン)さんの『悩む力』は政治学者が書いた人生論でした。
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僕が編集にたずさわった茂木健一郎さんの本も、こうした例に当てはまると思います。茂木さんは脳科学者ですが、『すべては音楽から生まれる』は音楽論がテーマになっています。『ひらめきの導火線』も、トヨタの工場を見学してもらって、そのときのイメージをもとに日本人にとってひらめくとはどういうことなのかを論じてもらいました。そういった専門外の切り口が功を奏して、結果10万部までいったのだと思います。おそらく既存の新書の概念が覆されつつあって、実際にそういったものが売れてきているんですよね。
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ーー専門家とその専門外のトピックをどのように結びつけているのですか?
テーマや切り口は、ふだんの著者とのやりとりから出てくることが多いですね。著者からこういうことをやってみたいと提案されることもあります。芥川賞作家の平野啓一郎さんの『本の読み方』は、速読とは正反対のスロー・リーディングについて書かれているのですが、元々は「文章読本」をテーマとして考えていました。でも「書くこと」を追究して話し合っている間に、もっとじっくり本を読んでもらいたいという思いがわいてきて、スロー・リーディングで1冊書こうということになったのです。
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ーーそうやって違うジャンルの切り口から書いた本が売れるのですね!
いや、そのテーマが実際に売れるかどうかについてはほとんど予測不可能です。PHP新書はだいたい月に6点前後を発刊しているのですが、書店に並ぶ前にその6冊を机の上に並べてみて、どれが売れるだろうと予測をしても、なかなか予想通りにはなりません。自分の思い込みもありますし、売れ行きは、結局のところ書店に出ないとわからないわけです。それをいかに読者の意向をつかんで、こちらで要素を集めてパッケージにして、売れるだろうという自分の予想に近づけるかが編集の面白いところです。











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