プライム涌光(青春出版社) 中野和彦さん_その3
{ Tags: プライム涌光, 書籍編集者 \ 9 月16 }「要するに」という落しどころ
——多くの人に読んでもらうという点で、『日本人のしきたり』はとても入りやすい内容ですよね。
ありがとうございます。『日本人のしきたり』については敷居を低くすることもそうなのですが、各項目ごとに「要はこういうことなのか」と誰でも一度読めば頭に入る内容にこだわりました。じつはこれが僕の本作りにおいて一番重要視していることなんです。一つのテーマを簡潔にまとめて、「これはこういうことなんだね」ということを、読者がすんなりつかめるような本作りを心がけています。
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——すごくシンプルな構成ですよね。
たくさんの要素を入れすぎると結局何も残らないということがあるので、あえて一つのしきたりに対して、一つのポイントに絞ったのです。例えば、鏡餅一つをとっても、実はそれにまつわるネタはいくつもあるんです。それをいくつも並べるのではなく、一般の生活者が一番覚えておいたほうがいいことや面白いと思われる部分だけを選んで強調しました。
——大ヒット作ですよね。完成したときに手応えはありましたか?
一見シンプルな構成の本ですけど、企画の立ち上げから完成までに1年もかかりました。トータルで3回ほど大幅な修正をしてもらったんです。ですから、発刊したときは「やっと送り出せた」という思いが強く、むしろあの売れ行きにビックリしたというのが正直なところなのです。
こちらからの多くのリクエストを受け入れてくださった著者の飯倉先生には感謝しています。著者としては譲りたくない部分もあったでしょうし、僕も編集していて、持っていきたい方向性がありました。何度もぶつかり合いつつも両者が納得のいく形まで持っていけたからこそ、満足のいく本が出来て、そこに結果もしっかりついてきてくれたのだと思います。とはいえ、本が出た2003年からヒットまでに4年間ブランクがあるのですが。
——その4年間に何があったのですか?
制作していた2002年は日韓ワールドカップがあって、日本全体で愛国心の気運が高まっていた時期でした。『日本人のしきたり』もそれを見据えて作って、2003年の時点でそこそこは売れていたのですが、爆発的なものにはならなかったんですね。そして4年後の2007年に新潮社さんが出された『国家の品格』がヒットしまして、日本の良さを見直そうという日本回帰の流れがもう一度訪れたのです。その流れにうまくのれたのだと思います。
——著者の方との上手に付き合うコツはありますか?
僕は決して著者の先生との付き合いがうまいほうとは言えないのですが、いったん相手の意見を受け止めるようには心がけています。著者の先生も時間をかけて、自分なりの考えを持って書いてくださっているので、それに対する理解と敬意を示すことは大前提だと考えます。それを受け入れた上で、読者はこういうことを望んでいるのではないか、と提案するようにしています。
提案する際は自分がこうしたいというよりも、読者側の意見として伝えることが大切ですかね。著者にとってもそこが一番知りたいところですし、本作りで最終的に目指すのは読者に読んでもらうというところでもあるのですから。編集者と著者で「読者の満足」というマイルストーンを共有すればなんとか収められると思っています。

