三笠書房 清水篤史さん_その1
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第16回目にご紹介するのは、
三笠書房の清水篤史さんです。
『頭のいい説明「すぐできる」コツ』、
『たった3秒のパソコン術』
などのヒット作を多数ご担当されています。
ベテラン編集者ならではの広い見解と
深い哲学をお伺いしました!
大切なのは「目の前にはないもの」
――編集者になられて何年目ですか?
約20年になります。
――編集者になろうと思ったきっかけはなんですか?
もともと「本好き」で、学生時代から「本作りに携わりたい」という漠然とした思いがありました。ただ、自分は性格的にも能力的にも作家でなく、作家と読者を結びつける「橋」とも言うべき編集者に向いているだろうと、勝手に思っていましたね。しかも、作家と読者をただ「結びつける」のではなく、原稿に付加価値を加えて、その「出会い」をさらに有意義なものにしたいと、生意気なことを考えていた覚えがあります。
――どんな本を作りたいと思われたのですか?
いきなり大上段に振りかぶって恐縮ですが、学生時代、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を愛読していたんですね。この一冊によって「書籍の持っている可能性」に目覚めたと言えます。当時、僕は純真な青年だったので、影響を受けやすかったのでしょう。この小説、19世紀ロシアのある田舎町を舞台に、縦横無遇に多種多様なストーリーが目まぐるしく展開するんです。とにかく濃い。さらにテンションが高い。一冊の本の中に、「保守と革新」「聖的なものと悪魔的なもの」「親と子」「兄と弟」「男と女」、それぞれの対立、相克、愛憎などなど、これでもかと言わんばかりにたくさんのテーマが入っているんです。
で、読んでいるうちにふと思ったんです。この小説、きっと、いつの時代の、どの世代の人が読んでも、必ずどこかに「自分の問題」を見つけることができるはずだと。つまり、誰が読んでも「共感できる部分」が一つはある本だと思ったんです。『カラマーゾフの兄弟』は文学ですが、文学でなくても、このようなスケールの大きな本を作れないだろうかと、そんなとんでもなく生意気なことを考えていましたね。平たく言えば、親でも子でも、男でも女でも、どんな人が読んでも面白いと思ってもらえるような、そんな本作りがしたいと思っていたわけですが。
――学生時代はどんなアルバイトをされていましたか?
家庭教師から始まって、水泳のコーチ、参考書会社のアシスタントなどなど、いろんなことをやってましたね。中でも、コンビニエンスストアのアルバイトは印象に残ってます。影響を受けやすかったのでしょう。実際、コンビニのアルバイト体験は現職にとても役立っていると思います。一言で言えば、「お客さん目線」、つまり「読者目線」で考えるということ。「売りたいものは売れない。買いたいものが売れる」といったことを勉強させていただきましたね。
書籍編集というのは、ある意味、孤独な作業が多く、仕事の過程で「書店さんの売り場」や「読者の顔」が見えなくなってくることがあるんですよね。そんなとき「お客さん目線」「読者目線」で考える。「自分が売りたいもの」でなく「書店さんが並べたいもの」「読者が買いたいもの」をイメージしてみる。具体的には、今、自分が作っている本が、書店さんのどのコーナーに、どんな本の隣に並ぶのか。さらには、その本を見た読者はどう感じるかをイメージしてみるんです。すると、結構、軌道修正ができるときがあるんです。典型的なマーケットイン型の発想ではありますが。
そしてもう一つ、この体験では、「目の前にないものを考える」「目の前にないものを探す」ということを学びました。僕がお世話になった店長はとてもアグレッシブな方で、「一番売れる商品は店内にはない」という考え方の持ち主でしたから。「自分の店にある商品で一番売れる商品は何か」ではなく、「自分の店にない商品で一番売れそうな商品は何か」といった発想をされてましたね。当然、かなり影響を受けました。
これって、編集でも同じことが言えると思うんです。原稿が上がってきたとき、「もしかしたら、この中にないものが一番大切なことなのかもしれない」と考えるようにしています。「自分の原稿にない情報で、一番必要な情報は何か」という発想ですね。たとえば、著者の先生やライターさんに企画を考えてもらおうと、弊社の目録を渡すことがあるんですが、そのとき、半分本気、半分冗談で「あんまりじっくり見なくていいですよ。そこに来年のベストセラーはありませんから。それは先生に考えていただきたいんです」と言うんです。読者の嗜好の移り変わりが激しいこの時代、目録の延長線上にベストセラーがあるかについて僕は懐疑的です。来年はまったく違うブームがくるだろうし、同じ一年でも前期と後期では読者傾向が変わりますからね。つまり、僕らは、「目の前にないものを考え」なければならないわけです。
当時は、小売店でのアルバイト体験がこんなふうに後の仕事に生きてくるとは考えもしませんでしたし、まさかこんなふうに人に話すことになろうとは想像だにしていませんでした。ですから、学生時代は業種にとらわれずに、積極的に幅広い経験を積むことが大切だと思います。
[文庫]
著者:中山 真敬
出版:三笠書房
発売日:2008-04-21
価格:¥ 630



prethou
4月から出版社に就職する学生です。いつも愛読させていただいています。編集者.jpが復活リニューアルして嬉しいです。
編集部
prethouさま
いつもご愛読ありがとうございます!
また4月からのご就職、おめでとうございます。
上司の方にもご紹介いただけると嬉しいです。
ごいっしょにお仕事できることを心待ちにしております。