三笠書房 清水 篤史 さん

指示型から提案型へ – これが仕事の流れを変えた!

――新人時代のエピソードを聞かせてください。

時代の風潮かもしれませんが、当時、僕の上司は、「本作りにおいては、編集者が一番最初にテーゼ、つまり命題なり意見なりを出す」という考え方を持っていました。

それをふまえて、まずは編集者が見本原稿を書くということをやっていたんです。見本原稿とは、編集者がはじめに第一原稿を書いて、著者に僭越ながら「このように書いてほしい」と、その名の通り見本になるよう原稿のことです。自分なりの最高のものを上司に見せて、上司の確認がとれたものを著者に見せるわけですが、たいがい「これが見本か!」となじられるんですよ。その度に、自分が会社や著者の要求に応えられていないな、という悔しさを感じていました。それが僕にとって一番最初の大きな壁でしたね。


ところが、なじられているうちに、こちらも要領が掴めてくる。いろんなことが見えるようになってくる。僕は最初から100点満点の原稿を持っていこうとしていたんです。「このように書いてください」というスタンスで、著者の先生に原稿を見せていたわけです。ここが間違いだったんですね。


理想的な見本原稿とは、「読者はこういう原稿を読みたがっているんです」ということを著者の先生に伝えるものなんです。つまりは”指示型”の見本原稿ではなくて、「こういう原稿を読んでみたい」という”提案型”の見本原稿にするべきだと気づいたんです。例えば、見本原稿だからといって、原稿を全部は書かないようにする。「ここに、読者の指針とするべく、先生がお考えになる、現代の20代サラリーマンの最大の長所と最大の欠点を一つずつお書きください。」などと、大筋の方針だけ書いておいて、あとは空欄にしておくのです。すると著者の先生も原稿を書きやすくなるんです。


見本原稿を”提案型”に変えた途端、仕事がスムーズに進むようになりました。ついこの間まで僕をなじっていた著者の方が、すごくのってきてくれて、「君がこういう切り口で考えるのなら、こういった内容を入れてみてはどうか」などと、積極的に提案をいただけるようになりました。こちらからテーゼ、意見を問うことで、モチベーションを高く維持していただけたのだと思います。




「読んですぐわかる、すぐできる」

――本を作る上でのこだわりはなんですか?
「読んですぐわかる、すぐできる」をモットーに本作りをしています。現在の書籍文化の一つの源をおつくりになった神吉晴夫・光文社第2代社長の「神吉イズム」を、若い頃はずいぶんと教えられました。その神吉氏の言葉に「すべての本は実用書である。小説でさえも実用書である」というものがあります。最近は、この言葉をかなり意識していますね。それで「読んですぐわかる、すぐできる」。ただ、「読んですぐ理解できる」というのは当たり前です。さらに「すぐできる」というのがポイントになる。例えば歴史の本を作るときでも、「すぐ理解できる」という教養書としての側面に加えて、「すぐできる」という実用書としての側面も意識しています。その実用性とは「ただの会話のネタになる」といったレベルでもいい。読者にとってすぐ実践できるという方向性で作っています。



――「読んですぐわかる、すぐできる」本とはどのようなものですか?
「すぐわかる、すぐできる」なので、結論から入ることを常に意識しています。文章の起承転結という言葉がありますよね。僕の想定読者層を考えると、「起承転結はちょっとまどろっこしいかな」と思うのです。現代の読者は時間に追われていて、答えを早急に知りたがっている方が多いので、「大切なことは始めに書く」を意識しています。それが「すぐわかる」原稿につながると思います。それについてはまさしく、昨年の文庫本ベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』にも書いてあることと一致します。



頭のいい説明「すぐできる」コツ―今日、結果が出る! (知的生きかた文庫)
「頭のいい説明「すぐできる」コツ―今日、結果が出る! (知的生きかた文庫)」
 [文庫]
 著者:鶴野 充茂
 出版:三笠書房
 発売日:2008-11-20
 価格:¥ 600





内容的にも「ワンニーズ、ワンテーマ」を意識して、できるだけシンプルな本作りをすることを心がけています。今は一冊の本に対する購読ニーズがはっきりとしていて、著者の魅力を一冊で全部知ろうという人はあまりいないと思うんです。ですから、無理に著者の魅力をすべて詰め込もうとするのではなくて、ポイントを絞って読者ニーズをしっかりと満たすことを第一義に考えています。





(続く)




三笠書房 清水 篤史さん vol.2

更新日: 2010年 4月 28日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

関連記事

コメント / トラックバック1件

  1. [...] せばこらすほどいいものになると僕は考えています。そして、その本についてそこまで真剣に考えるのは担当編集者しかいないですよ。本作りに終点はないのでしょうね。 (続く) [...]

コメントをどうぞ