
第17回目にご紹介するのは、
すばる舎の佐藤由夏さんです。
『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』や
『誰とでも 15分以上 会話がとぎれない!話し方 66のルール』
など多数のヒット作をご担当されています。
とっても気さくで、何事もすぐ行動する素敵な女性です。
笑い声が絶えないインタビューの中で、ご自身の経験とその哲学を語っていただきました。
本一冊を買っていただくことの重みを痛感
――出版業界に入られたきっかけはなんでしたか?
教育業界か出版業界のどちらかで働きたいと考えていました。でも、大手どころの出版社を4社受けたのですが落ちてしまい、「こりゃダメだ」と諦めました。その後、ご縁があって広告・イベント会社で営業職に就きましたが、編集者になることを諦めきれず、2年目の冬に再チャレンジしました。
――営業職から編集職への転換はどうでしたか?
営業経験はすごく生きています。いろいろな意味で。
お客様は自分には必要ないと思う商品には、1円だって出してくれませんでした。商品を品定めされるお客様の、あの真剣で厳しい眼差し……、忘れられません。もちろん、買っていただき、喜んでいただいたときの笑顔もですが。
単行本の多くは1000円以上もする高価な商品です。読者の皆様にトコトン役立つものでなければ、手に取っていただき、買っていただくことは不可能だろうと思っています。あんまり優秀な営業ではありませんでしたので、売れないことへの恐怖心と羞恥心だけは人並み以上に育っていると思います(笑)。
編集の仕事を始めた頃は、厳しいお客様の顔を思い浮かべながら、「あの方にこの本を買っていただくには、どうしたらいいだろう」などと考えながら、あれこれと本の売りをつくる工夫をしていました。
たとえば、見出しを考えるときも、聞き慣れたきれいな言葉よりも、ちょっと泥臭いけどリアルな言葉、気づきの詰まった言葉、出会えて良かったと思える言葉を探していました。まったく、こちらに関心をもってくれない人でも、ハッと振り向いてくれる言葉を探していたのかもしれません。
――営業経験が武器となっているのですね。
あの売れない恐怖から逃れたくて頑張れるという意味では武器なのかもしれませんね(笑)。お客さまの話をじっくり伺ってみると、問題に対して真剣に悩んで、解決したいと考えていらっしゃった方々も少なくありませんでした。読者の皆様も、きっとそうした方々なのではないかと思います。実際にお会いすることはできませんが、そうしたお一人おひとりの真摯な希望、切望、熱望をなんとなくではありますが、体感できるようになったことは、本当の意味でお役に立てる本作りをするうえで生きていると思います。
大切なのは「私」ではなくて「読者」
――新人時代のエピソードを聞かせてください。
振り返ると反省だらけです。向こう見ずな生意気新人だったので、上司にむかって「私は●●だと思います」「そんなのおかしいと思いますよ!」などと一方的な主張を繰り返していました。もちろん、著者の方にも平気で自分の考えを押し付けていたので、スムーズに意思疎通が図れなかった時期がありました。
その姿勢を見直すきっかけになった一言がありました。女性向けの読み物の本を編集していた時ですが、ある表現について「この表現だと△△という印象を受けます。別の表現に変えていただけませんか」なんて著者にお伝えしたところ、「佐藤さんの感じ方なんかどうでもいいんだよ!大事なのは、読者がどう感じているか、なんだよ!」とお叱りを受けました。それで目が覚めました。
大切なのは「私」ではなくて「読者」なんですよね。読者の代表者のつもりでいましたが、本当のところは怪しいものです。しかも、我を押し通すことに夢中になって、著者の方が本当に伝えたかったことは何だろう、などと考えることすらしなかったんです。勢いだけで仕事をしようとしていました。
――出版業界に入られてギャップを感じたことはありますか?
思い描いていたのは、作家さんと談笑をしたり、お酒を飲んだりしながら、颯爽とかっこよく仕事をしている女性編集者のイメージです。
でも、実際にはほど遠いです。私の場合は気力、体力、根性勝負です。髪を振り乱しながらでも、とにかく「売れる本」にするために諦めない、粘る、しつこい編集をしているところが、憧れのイメージとかけ離れています(笑)。
要領が悪いので、一度受けた説明を忘れてしまったり、へそ曲がりなのでこっそり別の方法を試してみたりして、やらなくてもいい失敗もたくさんしてしまいました。いろいろなチャンスを与え、失敗を許容してくれた上司、会社に感謝しています。
(続く)







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