NHK出版 松島 倫明さん

第19回目にご紹介するのは、
NHK出版の松島倫明さんです。

『フリー』
『JMM―Japan mail media』
などのヒット作を多数担当されています。

翻訳書を多く担当される中で、翻訳書の版権の取り方や、
翻訳書ならではの編集力についてお伺いしました。

価値観の転換になった『趣味の園芸』

——編集者になられて何年目ですか?

編集者になってもう13年目です。入社して最初は営業を2年やっていました。その後、『趣味の園芸』という雑誌の編集を2年担当し、その後単行本の編集に異動になって、書籍編集者としては11年目になります。

——学生時代からずっと出版社に入りたいと思われていたんですか?

そうですね。僕は大学に5年間いたのですが、実はサラリーマンとか、なりたくないなと思っていたんです。なので、4年生のときには就職活動をしなかったんですよ。でも大学院受験に失敗して5年生になったときに、「本が大好きだから、出版社だったら行ってもいいかな」と思い、出版業界だけを受けました。今考えるとすごく不遜で青臭かったなぁと思います(笑)。

——どういう本を作ろうと出版社を希望されたのですか?

学生時代は頭でっかちで、小説も好きでしたがニューアカデミズム系の思想書なんかを貪るように読んでいましたね。だから、哲学思想系の本を作りたいなとその時は思っていました。当社の志望理由もNHKブックスという思想系や人文系も扱っている選書シリーズがあるのですが、そこで自分のやりたい方向性が実現できるのかな、と思ったからです。

——出版社に入ってギャップを感じたことはありましたか?

本を作りたいと思って入社したので、最初に営業局に配属されて驚きました。さらに驚いたのは、その後『趣味の園芸』に異動になったことです。『趣味の園芸』と最初に聞いたときは正直「えー!?」って思いましたね。園芸とはまったく無縁でしたし、特に男ですから花といっても、桜とチューリップぐらいしかわからないですし。ところが、やってみたらすごく面白かったですね。そこに2年いましたが、自分の中では価値観の転換になりました。

NHK 趣味の園芸やさいの時間 2010年 04月号 [雑誌]
「NHK 趣味の園芸やさいの時間 2010年 04月号 [雑誌]」
[雑誌]
出版:日本放送出版協会
発売日:2010-03-20
価格:¥ 650
by ええもん屋.com













——価値観の転換とはどのようなことがあったのですか?

最初は園芸なんてカッコ悪いとか、年寄りのやるものだっていう意識があったんです。でも、街を歩いているときに咲いている花の名前が分かるようになる、そんなささいなことがうれしくなっていったんです。植物の変化から、季節を敏感に感じられるという、季節観がついたことも大きな収穫でした。今まで街を歩いていても、自分がいかにこういうものを見ていなかったかがすごくよく分かったんです。あとは担当記事で撮影した草花の苗を持って帰ってきて、自宅のベランダで育てたり、ハーブを育ててそれを料理で使ってたりして。かなり園芸LOVEになりましたね(笑)。

特に若い時ってすごく食わず嫌いで、頭の中だけでモノゴトを決めつけがちですが、どんなことでも何かしらの発見と学びがあるんですよね。園芸を極めている人の話はとても興味深く、盆栽なんかすごく奥が深くて、実際にやってみたらすごく面白かったんですよね。今でも『趣味と園芸』はいい経験だったと思っています。

きっかけは「社内唯一のメルマガ読者」

——村上龍さんの本を多く担当されていますね。

5年目に書籍編集部に異動になって、村上龍さんが主宰するメールマガジン、
Japan Mail Media(JMM)の単行本化を担当することになりました。
編集の仕事をしていると、自分の大好きな作家さんと人生に一度は仕事がしてみたいと思いますよね。僕は10代のころから村上龍さんの作品が大好きで、いつか一緒にお仕事が出来たらと思っていたんです。それが入社5年目でいきなり実現して、ものすごく嬉しかったですね。

JMM〈VOL.1〉プロローグ 日本の選択した道
「JMM〈VOL.1〉プロローグ 日本の選択した道」
[単行本]
著者:村上 龍
出版:日本放送出版協会
発売日:1999-11
価格:¥ 1,260
by ええもん屋.com













——すごいですね。何がきっかけで実現されたのですか?

当時の書籍編集長がJMMの単行本化の話を村上龍さんと決めたのが1999年で、その当時はメールマガジン自体がそれほど一般的ではありませんでした。そこでその編集長が社内でJMMをメールで実際に読んでいる人はいないかと調査したところ、唯一僕だけがとっていたんですよ。メールマガジンのテーマは主に経済で、僕自身、突っ込んだ内容になるとよくわからなかったのですが、ずっと村上さんに憧れていて、村上さんが主宰されているメールマガジンなら面白いに違いないと思って読んでいたんです。それがきっかけで、人事異動の時にその書籍編集長に引っ張っていただき、JMMの単行本を担当することになりました。

——憧れの作家さんとのお仕事はどうでしたか?

ものすごく勉強になりましたし、刺激になりましたね。当時は無料で良質のコンテンツをメールで配信するというのはまだすごく新しくて、注目されていましたし、そうした無料のコンテンツを今度は本にして売っていくために編集長以下、JMM編集チームとして試行錯誤を重ねました。本ならではの付加価値としてプラスアルファの対談を加えたり、写真やイラスト、2色刷を駆使してデザイン的に工夫したりと、毎号気合を入れて作っていました。おかげさまで13号まで出すことができました。

今でこそ雑誌が不調と言われ、ブログなどを使って個人がメディアをもつ時代だと言われていますけれど、村上さんはそれを10年前から実践して、個人で10万人もの読者を抱えるメディアを持っていたんですよね。当時は個人でメディアを持つなんてピンとこないですし、誰もが雑誌のほうが影響力があると思っていました。そんな中、つねに時代の先を行く村上さんのような鋭い目線を持たれている方と直接つながって仕事が出来たというのは、とても恵まれていたと思います。

(続く)

NHK出版 松島 倫明さん vol.1

更新日: 2010年 6月 22日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

関連記事

コメントをどうぞ