美術出版社 宮後 優子さん

第20回目にご紹介するのは、
美術出版社の宮後優子さんです。

デザインの現場
企画書は見た目で勝負!
など、デザインにまつわる本を担当されています。
表紙の加工、印刷所との付き合いなど、
デザインという視点から、本作りについて語っていただきました。



まさかのリストラに!



——編集者になられて何年目ですか?

今年で17年目になります。



——出版業界に入ろうと思ったきかっけはなんだったのですか?

学生の時から本作りに興味をもっていました。美術系の大学で美術史を勉強していたこともあり、写真やイラストのあるビジュアル中心の本を作りたいと思っていたんです。



——そもそも本を作りたいと思われたのは本が好きだったからですか?

昔から文章を書くことと絵を描くことが好きだったのですが、作家のようにゼロから生み出すのではなく、何かを組み合わせて一つの世界観をつくるような仕事に携わりたかったのです。だとすれば本を作るというのが一つの方法なのかなと小さいころからぼんやりと考えていました。むしろ、自分にはそれしかできないだろうなと思っていました。

そういうわけで、実用書やビジュアル本を多く出している出版社を中心に就職活動をして、どうにか新卒で出版社に入社しました。



——では、出版社に入って、最初からデザイン書を担当されたのですか?

ご縁があって入社した会社は、分冊百科や翻訳本などのビジュアル本や雑誌を出していた出版社でした。私は、書籍編集部に配属されて、『BIRTHDAY BOOK』(1年365日の各日ごとに、その日生まれの人の性格、向いている職業、運勢などを記した365冊の本)や翻訳書の編集を担当していました。しかし、入社して2年ぐらい経った時、私が所属していた書籍編集部が部署ごと突然なくなってしまったんです。



——もしかしてリストラですか?

そうなんです。まさに「リストラなう」ですよ。会社の経営悪化による解雇でした。当時15名近くいた書籍編集者が全員一斉に職を失ったのです。私はまだ入社2年半で経験も浅かったので、次の就職先が見つかるかどうか不安でした。そうしたら、MacでDTPをしていた私を見て、会社の先輩がコンピュータ書の出版社がいいのでは?と勧めてくれたんです。

それで次にコンピュータ書を扱う出版社に入り、そこで初めて雑誌を担当させてもらいました。そして2年ぐらいやった頃にちょうど隔月刊のデザイン専門誌『デザインの現場』で編集スタッフの募集があり、そのジャンルにはもともと興味があったので、美術出版社を受けて今に至ります。



——思いがけないリストラとともに、雑誌に出会ったんですね。

そうですね。最初の会社では雑誌に携わることはなかったのですが、転職によって雑誌を担当することになり、そこでいろいろと学べたので、結果的にはいい経験になったと思っています。思いがけないリストラでしたが、それによって元同僚同士の絆も強くなり、今でも連絡を取り合い仲良くしていただいています。



自ら赴き現場感を伝える『デザインの現場』



——普段お仕事をされるときに気をつけていることはありますか?

美術出版社に入ってからは、『デザインの現場』編集部に入り、編集長時代を含め、12年ほど携わりました。『デザインの現場』の特徴は、創刊当時から現場をきちんと取材しようというポリシーがあって、必ずデザイン事務所や企業など、デザインが生まれる現場に直接行って取材をしていることです。私もその1メンバーとして、現場感を伝えることが使命だと思っています。
この雑誌は1984年に創刊されて、以後、脈々と地道に作られてきました。メインの読者はプロのデザイナーさんや、将来デザイナーになりたいと思っている学生さんです。話題になっている広告やグラフィック、プロダクト、インテリアなどがどのように作られたのかを、それを作ったデザイナーや企業担当者の方々に取材していました。
私がメインで担当していた頃は、デザイナーの方に役に立つ情報を提供するように心がけていました。一流デザイナーの仕事を取材して、その中から読者の方が応用できるテクニックや、参考にできる役立つ情報をピックアップして紹介するようにしています。



——その他でこだわりはありますか?

デザイナーの方が読まれる雑誌なので、雑誌自体の印刷には気を遣いました。掲載される作品の色を印刷で正確に再現するため、作品写真と一緒に作品そのものを色見本として貼付して印刷所に入稿していました。そのほうが印刷現場の方に作品の色を正確に伝えられ、よりクオリティの高い印刷ができるからです。
また、表紙に特殊印刷加工を施すなど、凝った造本をしていました。例えば、「UVシルク」という盛り上げ加工をしたり(2003年8月号)、「インラインホイル」という金型を使わない箔押加工をしたり(2006年12月号)、さまざまな特殊加工をしてきました。





このような特殊加工を紹介すると、デザイナーを中心とした読者の方が印刷会社に問い合わせることがあり、結果的に印刷会社と読者をつなぐことが出来るんですね。それによってまた新しく素敵なデザインが生まれるかもしれない。これはデザイン誌ならではの役割だなと思って、うれしく感じています。
残念ながら今年3月で雑誌は休刊しましたが、今後は書籍でこのような試みを実践していく予定です。その第一弾として、『デザインの現場BOOK 印刷と紙』を刊行しました。





この本では、本文の折ごとに違う紙を使い、8種類の特殊紙サンプルを巻末に挟み込んでいます。カバーにはオーダーメイドした銀紙を使い、合計20種類の紙が入った本になりました。


(続く)

(デザインの現場BOOK) 印刷と紙
「(デザインの現場BOOK) 印刷と紙」
 [単行本]
 出版:美術出版社
 発売日:2010-05-25
 価格:¥ 2,100
 by ええもん屋.com

美術出版社 宮後優子さん vol.1

更新日: 2010年 5月 31日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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