
記憶に残る、あのヒット作はどうやって作られたのか。【あの本の裏側】では、企画の経緯から発売まで、本づくりの過程を2回にわけて紹介していきます。
5冊目にご紹介するのは、幻冬舎メディアコンサルティングの『35歳の教科書〜今から始める戦略的人生計画』。2009年、ソニー生命創業30年にあたり企画された「ブランディング書籍」ですが、書店の売上ランキングトップ10入りを果たすなど、発売直後から好調な売れ行きをみせました。担当の田中怜子さんにお伺いしました。
社会貢献としてのブランディング書籍
――企画の経緯を教えてください。
幻冬舎メディアコンサルティングは、基本的に企業様から制作費をいただいて本を作っています。この本のクライアントはソニー生命さんで、創業30周年の企画として書籍を出版したいという依頼がありました。
ソニー生命さんは生命保険会社ですが、「保険」という商品を売っているのではなく、お客様に「ライフプラン」を提案している会社で、そこが競合他社と違うポイントです。この企画の目的は、社会貢献の一環として「ライフプランニング」の重要性を社会に向けて発信したい、ということと、この本を通じて全国の「ライフプランナー」(営業職員)に企業精神の根幹を再認識してもらいたい、ということでした。
――いわゆる「ブランディング書籍」ですよね?
はい。ですがちょっと特殊な例です。ブランディング書籍というのは通常、その企業の社長が著者となって、事業の強みや企業精神を紹介する書籍を作ることで自社をブランド化し、新たな顧客の獲得につなげる、という直接的な集客を目的としています。最初は私たちも、ソニー生命著、タイトルは『ライフプランニング』というような方法も考えていました。
ただ、広く社会に向けて、ライフプランニングという考え方の重要性を説く、というときに宣伝色が出てしまうと、多くの人に受け入れられにくいですよね。先方との話し合いの過程で、第三者的な立場の著者の方を幻冬舎ネットワークの中からたてることになりました。そこで、「ライフプランニングが重要だ」という考え方を“素”でお持ちの方を調べ、藤原先生にご依頼することにしたのです。
藤原先生はちくま文庫から「人生の教科書」シリーズを出版されていて、幻冬舎からも『サクラ、サク』という小説を出しています。どちらも子ども向けで、和田中の「[よのなか]科」のように、成熟社会(経済成長が止まり、皆が同じ目標を目指せない社会)でどうやって生きていくかを子どもに教える内容です。
運命的なタイミング
――藤原先生はすぐに執筆を了承してくださったのですか?
ソニー生命さんのライフプランナーが顧客ターゲットとして中心にしているのは、ちょうど子どもが一人生まれたくらいの30-35歳くらいの方々なのですが、藤原先生にご連絡したところ、ちょうど先生のほうでも30代くらいのビジネスパーソンに向けた書籍の企画書をお持ちだったんです!
先生自身がリクルート時代に抱えていた、30代になったら会社の看板に頼ることなく自分自身の力で勝負をするという考え方、「組織内個人」としての会社と個人の新しい関係を作ること、そういった人生戦略がこれからの成熟社会では重要だ、という内容でした。これはいいタイミングだ!と思ったのでぜひ、と熱意を伝えたところ、承諾してくださいました。
――でも「ブランディング書籍」なのに、宣伝がまったくないですよね。
ソニー生命さんには予め、第三者的な著者をたてると、著名な方であればあるほどその著者の思想を曲げられないし、宣伝も入れられませんよ、ということを了承していただいていました。ちょうど同時期に『ソニー生命 4000人の情熱』(出版文化社)という本が動いていて、宣伝の役割はそちらが担っていたからかもしれません。藤原先生の執筆部分には手を入れない代わりに、解説を於久田社長に書いていただいたらどうか、というご提案をしました。藤原先生の書いた内容について、共感したら共感した、共感できなかったら共感できなかったと、本音を書いてくださいと。結果的には、先生が提唱する人生戦略の重要性が、ライフプランニングや個々人が自立して自分の人生を考えていく、というソニー生命さんの考え方と合致したので良かったです。
――ではすごく良いタイミングで揃ったわけですね。
いろいろなベクトルがうまく合ったんだ、と思います。ソニー生命さんの考え方と合致する著者が見つからないと始まらなかったですし、著者が、こちらの意図しているような内容(ライフプランニングの重要性)に興味がない限りブランディングとして意味がないものになってしまいます。それに、宣伝色を入れないことを了承してくださるクライアントでなければ難しかったですから。
(続く)









とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます