
身近なものを集めた『これ、誰がデザインしたの?』
――今までに担当された中で思い出に残る本について聞かせてください。
『これ、誰がデザインしたの?』は私が美術出版社で最初に出した書籍ということもあり、思い入れがありますね。2000年から『デザインの現場』で続いていた「これ、誰がデザインしたの?」という連載を書籍化したものなんです。
デザイン誌だとデザイナーさんが作ったカッコいいデザインが紹介されがちなんですが、この連載はそうしたカッコいいデザインではなく、身の回りにある誰もが知っているもののデザインを紹介しています。例えば、カップヌードルやヤクルトなど、普段の生活の中で目にする商品をデザインしたデザイナーや企業の方にお会いして、どうしてこういう体裁になったのかを根掘り葉掘り聞いていくという連載なんです。カップヌードルのロゴは、大阪万博のシンボルマークのデザイナーである大高猛さんが手がけているなど、意外と知らないトリビア的なお話をたくさん伺えて、面白かったですね。
――掲載する商品の選択は宮後さんがされているんですか?
私と著者の渡部千春さんで一緒に選別しています。なるべくメジャーで、そしてあまりデザインリニューアルをしていないものを中心に選んでいます。
――この本を作られるときに気をつけた点や、こだわりはありますか?
やはり装丁ですね。中で取り上げている商品が生活・実用ベースのデザインなので、普通にレイアウトしてしまうと、ベタなカタログのような本になってしまうと思ったんです。『デザインの現場』の読者に近いデザイン関係の方や企業の方に読んでいただきたかったので、ベタな方向ではなく、かといってハイセンスすぎないデザインのバランスに気を遣いました。
身近にあるものを改めて“デザイン”という視点から見た、面白い一冊になっています。雑誌では2000年から2008年まで連載し、2008年以降は『デザインの現場』公式ブログで更新しています。気づけばこのテーマでもう10年ぐらい続いていますが、まだまだネタは尽きません。

ユニークな技術を紹介してデザイナーとの架け橋に
――『工場へ行こう!! デザインを広げる特殊印刷の現場』も目をひく装丁ですね。

カバーには、内藤プロセスさんの「ミラクルヴィジョンプリント」という特殊なスクリーン印刷を施しました。透明なインキを紫外線で硬化させ、いろいろな凹凸がつけられる特殊印刷です。カバー自体が9種類の凹凸柄を印刷した印刷サンプルになっています。

この本も『デザインの現場』の連載記事がベースとなっています。デザイナーの高橋正実さんが特殊印刷工場の技術を使ったデザインを考え、その工場で実際に印刷していただき、制作過程を紹介するという連載でした。例えば、最初に取材した「トップ・フーズ」さんの工場では、「食べられる印刷」を使ったデザインを作っていただきました。
――食べられる印刷があるんですか?
トップフーズさんでは食品から作ったインキをお饅頭やチーズケーキに印刷しています。どろっとしたおかゆに抹茶を混ぜて緑のインキを作り、それをコンニャクの成分からできた薄い透明フィルムにスクリーン印刷で印刷するのです。
※『工場へ行こう!!』より転載、撮影:桜井ただひさ 以下同


そうしてできた印刷シートを食品の上にのせて転写すると、全部丸ごと食べられる印刷を施した食品が出来上がるんです。 この取材の時は、高橋さんがデザインした唐草模様を印刷したシートを茶巾寿司の上に転写して、唐草模様の茶巾寿司をつくりました。

印刷って紙にするものというイメージがあるんですが、そこから飛び出して食品に印刷するという発想が面白いですよね。
工場という現場でものができる仕組みを見ていくと、「この機械を使えば、あんな印刷や加工もできるのではないか?」と新しい発想が広がっていきます。デザイナーの方にぜひ読んでほしい本です。
――反響はありましたか?
実際にこの連載が始まってから、デザイナーさんが工場に行くことが増えてきたそうです。今まで特殊印刷はあまり使う機会もなく、知られていなかったのですが、この本が出てから、特殊印刷にも興味を持ってもらえるようになったと思っています。
――工場の方も自社の技術が紹介されて喜ばれたのではないですか?
そうですね。工場の方から、読者から問い合わせがあったとか、お仕事の依頼があったというお話をうかがいました。読者と工場の架け橋になれたら幸いです。
(続く)









