
書体の教科書『欧文書体』
――書体の本も作られているのですね。
これはデザイナーや編集者の方のために、欧文書体の背景と選び方、使い方を説明した本なんです。今までこのジャンルは、書体の歴史などについて語られた学術的なものが多く、実際のデザイナーやDTPの方がデザインワークで役立てられるような実用ベースの本がほとんどありませんでした。
そこで小林章さんに執筆をお願いしました。小林さんはドイツのライノタイプ社という世界最大の書体メーカーで、書体を制作、監修する仕事をされている世界的にも有名な方です。本場ヨーロッパで欧文書体をつくるお仕事をされている方なので、実用的でわかりやすい説明ができると思いました。
――「実用的な欧文書体の本」とは具体的にどんなことが書かれているのですか?
例えば、「designer’s」などの英文で使われる「アポストロフィ」( ’ )。日本では、こういう真っすぐな形をしたもの( ʹ )を使うときがあります。でも、このまっすぐのほうは間違いで、正しくは「 ’ 」を使うんです。そんなマメ知識や、代表的な欧文書体の背景、どういう経緯で作られて、どういう目的で使うものなのかを説明していただきました。徹底的に使う人の側に立って書かれています。
2005年に『欧文書体 その背景と使い方』、2008年にその続編となる『欧文書体2 定番書体と演出法』を刊行しました。専門書としては異例の売れ行きで、どちらも未だに重版し続けています。

――『欧文書体2』にある「ドイツらしさを演出する書体」という項目が興味深いですね。
他にも、「信頼感を伝える書体」や「高級感を演出する書体」など、イメージに分けて紹介しています。日本と欧米では文化が違うので、どの書体を使うとどういう雰囲気になって、現地の人がどういう風に受け止めているのかというのは日本人ではわかりにくいのですが、この本によって確信を持って書体が選んでいただけるのではないか、と思います。

――教科書みたいな感じですね。
そうですね。これを参考にして、みなさんのデザインにうまく落し込んでいただければと思っています。
デザイナーの困っていることが企画のベース
――デザイナーのための本がほとんどですよね。どのようにデザイナーのニーズを引出しているのですか?
私の企画の出発点はデザイナーの方が「困っていること」なんです。取材をしていると、彼らがわからないことや仕事上の悩みを聞くことがあります。それを解決するために、こういう本があればみんな参考にできていいんじゃないかと、そこから本づくりのヒントを得ています。
例えば、デザイン事務所に所属していて独立するときっていろいろなわからないことがありますよね。事務所の物件をどうやって探して契約すればいいのか、請求書をどうやって書いて出すのか、どうやって営業したらいいんだ、とか。そういった情報は体系的にまとまっていないし、同業者には聞きづらい。それをまとめたのが『クリエイターのための独立ガイド』です。
市販されている独立起業関係の本は一般のビジネスマンを対象に書かれているので、デザイナーやカメラマン、イラストレーターなどクリエイティブな方々のが読んでもあまりピンとこないんですね。それならばと、クリエイターに特化した独立起業ガイドを作ろうと思って企画しました。『デザインの現場』の特集記事として掲載したものをベースに再構成して、一冊にまとめています。

これらの本はおもにデザイナーが対象ですが、編集者や印刷関係者、デザイナーと仕事をする企業の担当者などが読んでも活用していただけると思います。最近では一般の方々もコンピュータで名刺やプレゼン資料を作成するなど、デザインワークをされることが多いので、潜在的なニーズはあるのではないでしょうか。これからも、読者の方の「これがほしかった!」というニーズを満たす本を作りたいなと思っています。
(続く)









