
いいデザイン書は印刷所との共同作業から生まれる
——『図地反転』はシンプルですが印象的な装丁ですね。どのような内容の本ですか?
これは隔月刊デザイン誌『デザインの現場』のアートディレクター、松田行正さんが同誌で連載していた「designscape」(デザインスケープ)という記事をまとめた本です。映画、漫画、絵画、ロゴなどを松田さん独自の視点から分析しています。
松田さんは様々な現象をビジュアルで表現するのがうまい方なので、例えば映画「ダイハード」の主人公が逃げ回った形跡を図解してみたり、映画「スーパーマン」のスーパーマンとヒロインと悪役がどのように絡んでいくのかを説明した図をつくったり、誰もやらないようなことをされていてすごく面白いんです。

——映画の登場人物の絡み方を図解で説明するというのは面白いですね。
主人公と悪役が戦ったとか、映画の登場人物の人間関係をいちいち図で説明するなんて誰もやらないですよね(笑)。
あとは、ビートルズのアルバム「HELP」や映画「亡国のイージス」に出てくる手旗信号が正しいかどうか確認したり、目の付けどころが絶妙で、好きな人はとても楽しめると思います。
——造本も凝っていますね。
ページをめくると、小口に絵が現れる仕掛けになっています。1枚の写真をある計算に従って加工すると、このように見事な絵柄になるんですね。

——これも独特な印刷法があるんですか?
そうなんです。絵柄がずれないように印刷製本するのが難しいらしいのです。
松田さんの本は三永印刷の佐藤さんという方がずっと印刷担当をされていて、このような造本にも慣れていらっしゃるので、今回もその方にお願いしています。佐藤さんには『デザインの現場』の取材でもお世話になってますが、すごく印刷に詳しい方なんです。
——印刷所はどのように選ばれているのですか?
良い印刷ができるかどうかは、印刷所の規模ではなくて、営業や現場の担当者の熱意によると思っています。大量部数を短期間で刷るような仕事は大きい印刷所でないと対応できないかもしれませんが、弊社で作る専門書ではいきなり何十万部も刷ることはないので、印刷所の規模はあまり関係ないんです。今は印刷機の性能も良くなってきているので、一通りの印刷設備がある印刷所であれば、あまり差がつかないと思うんですよ。
印刷の規模や設備より私が重視するのは、担当の方がどれだけ一生懸命にやってくれるか、です。『図地反転』のように手の込んだ面倒な造本は、面倒だし、トラブルになりかねないので、印刷会社としてはあまり受けたくないはずなんですが、佐藤さんには楽しんで担当していただき、すごく助かりました。
——印刷所とのつながりが深いんですね。やはりそれはデザイン書ならではのことでしょうか。
そうかもしれませんね。私の担当書では特殊加工をよく使うので、編集者が直接印刷所と細かいやり取りをしたほうがスムーズなんです。複雑な印刷加工の場合は事前に工場を見せていただいたりして、仕組みを把握してから仕事にあたるようにしています。実際、印刷立ち会いに行くこともありますね。
——印刷所の担当の方は指名されるんですか?
一般的な書籍では指名しませんが、特殊な印刷加工が必要なものでは直接指名させていただきます。
前向きにやっていただける印刷所とお付き合いしたいですよね。お互い、いいものを作りたい!という熱意があって、はじめていいものが出来上がると思うんです。
——印刷所の職人魂ですね。
そうですね。そういう職人魂のある方はお話ししていればすぐわかりますし、こちらのお願いにも快く応えていただけるんです。そのぶん、こちらもあんまり無理なスケジュールでお願いしないよう、他の印刷物との兼ね合いを考えたり、お互い気持ちよく仕事をできるように気を使っています。
デザインノウハウを一般のビジネスマンに向けた『デザインビジネス選書』
——『企画書は見た目で勝負』もいろんな書店で見かけますね。
ありがとうございます。最近は『企画書は見た目で勝負』をはじめとした、「デザインビジネス選書」というシリーズも担当していているんです。今まではデザイナー向けに専門書を作ってきましたが、このシリーズでは一般のビジネスマンの方にも読んでいただける本を目指しました。

——具体的にどんな内容を取り扱っているのですか?
最近ではビジネスマンの方でも、見栄えのいい企画書を自分で作らないといけないなど、デザイン性が求められる場面が増えてきたと思うんです。でもビジネスマンがそうしたことを勉強したいと思ったときに参考になるようなデザイン書があまりなかった。一方で、ビジネス書の棚にも「見栄え良くデザインする方法」というような本はなかったので、その間を埋めるニーズに答えようと思って作ったのがこの「デザインビジネス選書」シリーズです。
——デザインという視点からのビジネス書ということでしょうか。
そうですね。私たちが『デザインの現場』で培ってきたデザインノウハウをビジネスシーンに置き換えてまとめたものです。
例えば、レイアウト関連のデザイン書はたくさんありますが、こういう本で載っているのは雑誌やポスターのレイアウトだったり、一般のビジネスマンがすぐ使える作例ではなかったんですね。そこで、一般のビジネスマンの方が一番作るのは企画書だと思い立ち、企画書をベースにしました。
企画書の作り方というのは類書がたくさん出ているので、その部分は思い切ってバッサリ省き、私たちが得意とするレイアウトやデザイン的にどう見えるのかに特化した本にしました。パワーポイントやワードで作る企画書などの作例をたくさん挙げて、良い例と悪い例を比較して解説しています。本書内で紹介した事例のデータも読者プレゼントで差し上げていたんですよ。
企画の内容は凄く良いのに企画書の見た目がイマイチだと、説得力に欠けてしまいますよね。デザインに少し気を使うだけで印象は格段よくなります。それは「美的センス」というよりは「ノウハウ」なので、法則を覚えておけば、それほど難しくありません。
デザインはセンスだから自分はできないと思ってしまう方も多いですが、レイアウトの範囲で考えていくと、そんなにセンスを問われるわけではないんです。むしろ法則的なことが多いので、この『企画書は見た目で勝負』でも、「企画書で使う色は三色まで」というように言い切ってしまっています。
——言い切られている方がデザインが苦手な人にとっては心強いですね。
そうですね。ある程度ルール化してしまうことが実践しやすいポイントですね。
——『デザインビジネス選書』は立ち上がったばかりのシリーズなんですよね?
2009年の9月から始まって、『企画書は見た目で勝負』が一冊目、『リトルスターレストランのつくりかた。』が二冊目で、『スゴ編。』が三冊目になります。これから夏にかけて新刊、『売れる色を見極めるマーケティング 儲かる色の選び方』が出る予定です。
——ビジネスの中でも幅広い内容をやられているのですね。
マーケティングとか、企画や編集部分までも含めています。何かに絞りこんでしまうのではなくて、今まで専門書しかなかったジャンルのものをデザインという視点からどんどん一般化していきたいですね。
一般の方のデザインを見る目というのはすごく厳しくなってきているし、昔に比べて成熟していると思うんです。そして今度はブログとかツイッターとかソーシャルメディアが出来てくると、自分で何かをデザインしなければいけないというシチュエーションが増えてくるでしょう。例えばツイッターのアイコンをどう作るかとか、背景をどうするかとか、それもデザインだと思うんですね。
——気付いていないだけで一般の人にもデザイン力が求められているんですね。
そうなんです。一般の方でもパソコンで簡単にデザインできてしまいますが、第三者から見たときにそれがどういうイメージを与えるかというのは意識されていないと思うんです。このようなデザインからの視点というのはありそうでなかったジャンルなので、今後もデザインノウハウを一般の方にもお伝えしていきたいと思っています。
(続く)
[単行本(ソフトカバー)]
著者:道添 進
出版:美術出版社
発売日:2009-09-15
by ええもん屋.com
[単行本(ソフトカバー)]
著者:リトルスターレストラン,山本高樹
出版:美術出版社
発売日:2009-09-15
by ええもん屋.com











