メッセージは一つ、味わいは芳醇



——ヒット作、『体温を上げると健康になる』について聞かせてください。
この本の著者、齋藤真嗣医師とは最初、『ゴルフで老いる人、若返る人』という本を2007年につくったんです。当然その本はゴルフコーナーに置かれまして、読者ターゲットも「ゴルフをやっている人」に限定されていました。それでも3万6千部ぐらいと、そこそこ売れていたのですが、読者ターゲットをもっと広げて、つくり方を工夫すれば、齋藤先生の本はもっともっと売れるはずだと思ったんです。そこで第二弾の切り口をどうすればよいか、著者とも相談したのですが、これはという突破口が見出せない。そんな状況が続いていたある日、何気なく『ゴルフで老いる人、若返る人』をパラパラと見ていたら、「一日一回、体温を一度上げなさい」という見出しが目にとまり、ここを掘り下げて次の本をつくろうと思いついたんです。実をいうと、この本はつくっているときから、「これは売れる!」という予感めいたものが僕と社長にはありました。今偉そうに言いましたが、予感がはずれることのほうが圧倒的に多いんですけどね(笑)。


——どんなところで「売れる!」と思われたのですか?
2003年に出た本に、三笠書房の『「体を温める」と病気は必ず治る』(石原結実著)という本があって、ロングで50万部以上売れていました。同じ読者ターゲットを対象にしつつも、切り口と内容とロジックがまったく違う本をつくれば、同じように売れるはずだという仮説を立てたのです。具体的には、石原結実先生の本は西洋医学と東洋医学の両方のエッセンスが入っていたので、齋藤先生の本は西洋医学オンリーでつくることにしました。また、石原先生の本は食べ物の話が多かったので、齋藤先生の本には食べ物の話はほとんど入れないようにし、筋肉を鍛えることに絞りました。「体を温める」ことと「体温を上げる」ことは実は違うのですが、読者は同じはずだと。だから同じように50万部は売れるはずだと(笑)。類書の実績から、ある意味、「左脳的」な分析もしたわけです。
この仮説が当たれば売れるし、売れなかったら仮説が外れたということです。今ここでは当たった話ばかりしているんですけども、もちろん仮説が外れたことのほうがはるかに多い(笑)。でも、自分なりの仮説を立てるということは、プロの編集者としてとても大切なことだと思うんです。


——この本をつくるうえで、どんなことにこだわりましたか?
本の背骨というか、一本の明確なメッセージを貫き通したところです。つまり、この本で言いたいことはたった一つなんです。「筋肉を鍛えて基礎代謝量を上げれば、体温が上がって健康になる」。ただそれだけを言うために一冊の本がつくられていて、そのメッセージをよりわかりやすく、よりおもしろく伝えるために、ときに驚きを感じながらも自然と納得していくロジックを組み立てました。どんどん横道に外れたりもしながら、最終的には「体温を上げると健康になる」という背骨のメッセージに戻ってくる。どんな場所を読んでいても、最終的なゴールはここだと、読者がわかるようなつくりにしています。
本というのは「著者の考えが研ぎ澄まされた結晶」であって、その本がもつメッセージは一つでなければなりません。うちの社長がよく言うのですが、赤なのか青なのか、はっきりしないといけない。本が放つカラーは一色でなければいけないのです。でも、本がもつ味わいは芳醇であったほうがいい。ただ甘いではダメで、噛めば噛むほどいろいろな甘い味がしてくる。違うページを読むごとに多彩で複雑な味を楽しむことができる。そんな本づくりを心がけています。



タイトルの法則



——タイトルはどのように決められたのですか?
『体温を上げると健康になる』と『体温が低いと病気になる』、実は二つの最終候補があったんです。社長と話をしていて、『体温が低いと病気になる』の方がなんとなくセンセーショナルでいいかなと、二人とも気持ちとしては6対4ぐらいで、後者に傾いていたんですけど、どこかで引っ掛かりがあったんですね。そこで冗談半分に、「では、それぞれの女房の意見でも聞きますか」と社長に持ちかけてみたところ、そうしようということになったんです。たまたままだ会社に残っていた総務担当の役員にもお願いして、それぞれうちに帰って聞いてみることにしました。翌日に答えを持ち寄ったら、三人の奥さん全員が『体温を上げると健康になる』しかダメだと(笑)。「病気になる」なんて問題外だ、という意見だったんです。それで迷いが吹っ切れて、『体温を上げると健康になる』に決まりました。もしもう一つのタイトルだったら、こんなに売れることはなかったでしょうね。


——タイトルを考えるコツなどはありますか?
僕の個人的な意見でちょっとマニアックな話になるんですけども、タイトルの種類は主に2パターンあります。たとえば、『体温を上げると健康になる』は、タイトルで「結論」を言い切っていますよね。動きがあって、一文で言いたいことを全部タイトルに集約させているパターンです。一方、『病気にならない生き方』の場合は体言止めです。つまりメッセージのベクトルをタイトルでは語らず、メッセージの「出発点」を示しているんです。動詞型と名詞型、言い換えれば、動的タイトルと静的タイトル、この二つを意識して使い分けています。


——どのようなポイントで使い分けるのですか?
一冊の本でどっちにしようか、と迷うことはありません。一冊の本において、それはどちらかでしかなく、著者と企画の方向性を打ち合わせた時点で、即座に決まるものなんです。そして、その型を決めた上で具体的な言葉を、今度は音で考えていきます。歩きながら、頭の中で、音で考えていって、いいのが浮かんだらすぐメモする。そのくり返しですね。考えに考え抜いて、でもいいのが出てこなくて、そしてちょっと気を抜いたあたりにいいのが出たりする(笑)。帯のコピーの場合はタイトルと違って、音ではなく、文字で考えていきます。つまり、キーボードを打ちながら、磨き上げていく。タイトルは磨き上げるものではなく、本来そこにあるものを発見するという感じでしょうか。帯のコピーを磨き上げるのは訓練すればできるようになるけど、いいタイトルを発見できるかどうかは運しだいです(笑)。ここだけの話、発見できずに本を出してしまったこともきっとたくさんあるに違いありません(笑)。ちなみに『病気にならない生き方』というタイトルは、社長から「この本で言いたいことは結局、何なの?」と不意を突かれたとき、とっさに「病気にならない生き方ってことですかねぇ」と答えたのがそのままタイトルになりました。

(続く)

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更新日: 2010年 7月 26日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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