「本はタイトルと表紙で95%決まる」

——2009年度の「年間ランキング日本1位」の『1分間勉強法』の編集はどのようにされました?

人間が「なにか興味を引かれること」には「3つのステップ&要件」があります。この3つは「ステップ&要件」なので、1→2→3とステップを追って満たしていき、かつ、3つとも満たす本が、もっとも売れやすい本というわけです。


【ステップ&要件1】自分に関係あるか?(interest)

【ステップ&要件2】自分にとって得か?(benefit)

【ステップ&要件3】自分にできるか?(possible)


……の3つですね。
2009年度の「年間ランキング日本1位」をとらせていただきました『1分間勉強法』(石井貴士)を編集する中でも、この3つがすべて当てはまるように編集をさせていただきました。つまり、「1:読者に関係があって→この不況の中で勉強はほとんどの人々に関係がある」、「2:読者に得になって→たった1分で勉強できるなら得だ」、「3:しかも読者にできる→たった1分なら嫌いな勉強もできそう」、というメッセージを、『1分間勉強法』の表紙とタイトルの中にすべて配置しているのです。


「本はタイトルと表紙で95%決まる」からこそ、「タイトルと表紙」には、徹底的にこだわりますし、出来る限り、この「3つのステップ&要件」を満たした言葉で、タイトルと表紙に使うコピーを組み立てていきます。


——「タイトル」の言葉は、どのように選ばれているのですか?
人間の感情を動かす「感情ワード」は4つあると思っています。人間は「感情の動物」なので、「論理的に正しいこと」を言われても、それだけでは行動に移しません。読者の感情をグラリと動かし、思わず本を買わせてしまうような、そういった要素が入った言葉を使う必要があります。


【感情ワード1】「信頼性のある言葉」

【感情ワード2】「手っ取り早くて、簡単で、効果がバツグン!などの言葉」

【感情ワード3】「ギャップを伝える言葉」

【感情ワード4】「ストーリーを感じさせる言葉」


……の4つです。
たとえば、【感情ワード1】「信頼性のある言葉」であるならば、『6000人を一瞬で変えたひと言』(大越 俊夫)のように、「6000人」という数字による実績で信頼を感じさせるようにします。【感情ワード2】「手っ取り早くて、簡単で、効果がバツグン!などの言葉」であれば、『1秒で財務諸表を読む』(小宮一慶)のように「1秒で」というところで、手っ取り早くて効果がバツグンそうな印象を与えています。【感情ワード3】「ギャップを伝える言葉」であれば、「美女と野獣」などがまさにそうで、「対極の組み合わせ」がギャップであり面白さを感じさせるのです。【感情ワード4】「ストーリーを感じさせる言葉」であれば『夢をかなえる象』(水野敬也)などが、読者にストーリーを連想させていますよね。


『1分間勉強法』の中に使われている言葉は、「1分間勉強法(簡単、ギャップ)、6万人中1位をとった勉強法(信用)、本1冊が1分で読める(ギャップ、簡単)、60冊分を1分で復習(ギャップ、簡単)、信じられませんがたった2日でできました38歳会社員(信用、ギャップ、簡単)」などのように、この4つの【感情ワード】をたくさん配置して、読者の感情をゆさぶっているわけです。それが、発売して丸2年がたちますが、50万部を突破して、いまだに売れ続けている理由だと思います。


——やはり根本的には「不安」に注目されて作られたのですか?

そうですね。「第2回目の記事」でもお話しましたが、基本的には、今の日本人の多くが将来に対する大きな「不安」をもっているのですよね。「不安」を解消するためには、自分自身のスキルを高めて、将来、何が起こっても大丈夫なようにしなければならない…→つまり「勉強法」を身につけなければならない…→でも、勉強はなるべくしたくない……。となれば、多くの人々の「不安」を解決するニーズというのは「短い時間で最大の効果が得られる勉強法が知りたい!」ということになるのですね。だってどんな勉強をするにしろ「勉強法」が大切なわけですから「勉強法」に関しては、一生ニーズがあるわけなんです。


なぜなら、みんな勉強ができないから。「私は勉強ができる!」って心底本気で思っている人って、実は、5%ぐらいしかいなくって、95%の人々は心の奥底で「自分は勉強が他人より苦手でバカかもしれない…」と不安に思っていると思うのですよね。僕はこれを【私ってバカかもしれない症候群】と名づけて呼んでいます。でも、実はこの「か・も・し・れ・な・い」ってところが「ミソ」なんですよ。


米カリフォルニア工科大学の下條信輔先生があきらかにしたDATAでは、高校生の70%が「自分は平均より頭がいいと思っている」のです。え……? さっきと「逆」じゃないかって? そうです……、ここのあたりが「ミソ」なんですよ。さて、その「ミソ」の部分をお話しますと、つまりですね……「心の奥底では95%の人々が自分はバカかもしれないと不安に思いながらも、だからこそ70%の人々が自分は平均以上だと信じたがっている」っていうのが、僕が「分析」する、今の「人間の感情」の結論なんです。そう……「信・じ・た・が・っ・て・い・る」のですよ……。


この「バカかもしれないと心の奥底で思いながら、そうじゃないと信じたい」っていうのって、まさに、芥川龍之介が自殺した理由である「将来に対する、ただぼんやりとした不安」であり、まさに「考えたくない問題」なのだと思います。「本当は心の奥底でみんな分かっているけど考えたくない問題(不安)を解決してあげる本=これからしばらく続く読者の心の奥底のニーズ」なのだと思います。その「読者の声なき声」を察知していくことであり「読者が自分自身ですら気づいていない心の奥底のニーズ」を察知していくこと……。


実際に『1分間勉強法』は50万部を超えましたが、今後も「読者の声なき声」を吸収しながら伸びていって、おそらく70万部ぐらいまでは行くと考えています。



小林正観さんのたどりついた幸せの本質論『もうひとつの幸せ論』



——小林正観さんの本も、2冊、編集を担当されているのですね。
編集を担当させていただいた『100%幸せな1%の人々』は小林正観さんの本の中でも22万部を売り上げて、2008年度の「年間ランキング日本5位」になった大ベストセラーです。『100%幸せな1%の人々』は小林正観さんが40年間続けてこられた執筆活動と講演活動の中で、「もっとも人々の心に響いたお話」をすべてのカテゴリーにわたってまんべんなくおさめている「スーパーベストアルバム」的な1冊なんです。小林正観さんのファンの方々が、まだ、小林正観さんの本を読んだことがない人々に、「最初にオススメする1冊」としては、まさに最適で、実際に、「最初にオススメする1冊」としてプレゼントしている方々を、何人も知っています。


そして、小林正観さんで2冊目に編集を担当させていただいた本である『もうひとつの幸せ論』は、正観さんが40年間続けてきた人生研究、人間研究の「総結論」を書いている本で、「人生の目的とは○○○○である」と、言い切っています。なので、僕の個人的な願いとしては、『100%幸せな1%の人々』で小林正観さんを知っていただいて、多くの小林正観さんの本をお読みいただき、最後の最後、正観さんがたどりついた、「幸せの本質論」→「人生の目的とは○○○○である」を、この『もうひとつの幸せ論』でお読みいただければと思っています。小林正観さんのたどりついた結論の本なわけですから、「表紙も少し本格仕様的に品格を持たせた形」に仕上げてあります。おかげさまで5万部を突破して、売れ続けております。



著者に初めて会うときには「表紙」ができている



——「表紙」についてはどうでしょうか?
先ほども申しましたように、「本はタイトルと表紙で95%決まる」ので、表紙にはめいいっぱいの労力を注ぎます。ここで編集者が「本末転倒」的なパターンとして陥りがちなのが、「本体の文章」に時間をかけて、時間をかけて、時間をかけて………それで時間を取られてしまって、最後のギリギリの「残ったわずかな時間で表紙作りをしてしまうこと」なのです。これは、僕も、昔はよく陥ってしまったパターンなので、自分自身でも「戒め(いましめ)」にしているのですね。


だってですよ…。「本はタイトルと表紙で95%決まる」のに、「残りの5%の本体の文章」を一生懸命によくしようと頑張っても、そもそも、「手にとってもらえなければ意味がない」わけです。あの……、別に、「本体の文章」が5%しか価値がないって言っているわけではないですよ。もちろん「本体の文章」だって、メチャクチャ大切ですよ。ただ、この「95%対5%」っていう極端な比率は、「それぐらいな極端な数字を出さないと編集者も著者も表紙とタイトルの大切さを理解できないし、実際の売れ部数だって、タイトルと表紙に95%依存する」ってことを、うったえたいのです。


逆の話をすると「ビジネス書はみんなかなり優れている」のです。だって、少なくとも「10年ぐらいその分野で頑張って本を書けるレベルになった人々」が書いているわけですから、「ビジネス書」を1冊読んで、まったく参考にならないってことは、ないと思うのですよ。究極的には「なんでもいいからビジネス書を1冊手にとって、そこに書いてあることを全部100%実践することができたら、その本を書いた著者と同じレベルまで成功する」ってことじゃないですか。みんな、本を読んでも、「行動を起こせないから、成功しないだけ」なのです。


僕は、「究極的には、成功とは、行動するか行動しないかだけだ」と思っていますので。でも、だからこそ、そんなに「いい内容をもったビジネス書」だからこそ、「タイトルと表紙で入り口を小さくしてしまったら非常にもったいない!」と思うのですよ。


——具体的には、どんなところを意識されていますか?
具体的には、たとえば「タイトルが100%必要な大きさをキープすること」を絶対に保持します。つまりですね…「優先順位1位がタイトル」なので、「優先順位2位や3位のほかのコピー」を入れるために、「優先順位1位のタイトル」を犠牲にするのは、これも「本末転倒」なのです。だから、「帯のコピーをもうちょっと目立たせたいから、本当はタイトルは今の大きさがいいのだけれど、まぁ、しょうがない、ちょっとタイトルを小さくするかぁ」ってことは、やらないってことですね。


「タイトル」と「帯のメインキャッチコピー」は、ボクシングと同じで「ワン・ツー」のパンチだと思います。やっぱり、最初のワンで、タイトルがビシッっと読者に突き刺さらないと、ツーの「帯のメインキャッチコピー」でとどめを刺せないですよね。だから、もっと、もっと、「ワンの重要性」を上げて表紙作りを考えてもらえればと思っております。「ワン」がなければ「ツー」もないのです。


もちろん、「タイトルをただ大きくすればいい」っていうことを言っているのではありませんよ。要は、「タイトルが100%必要な大きさをキープすること」なので、もともと、「タイトルを小さくして、シンプルで落ち着いた印象を与えたい」っていう表紙のコンセプトであれば、もちろん、それでいいということです。


でも、基本にたちかえると「タイトル」や「帯のメインキャッチコピー」は、「立った位置から読めること」が、スタンダードというか、基本の基本だと思うのですよね。読者は、ほとんどの人が、立って、歩きながら「本をスキャン」していくわけですから。だから、必然的に、「タイトル」はある程度、大きくなりますし、「帯のメインキャッチコピー」は短くなりますね。つまり、「コピーが短いってこと」=「文字を大きくできるってこと」なのですよ。具体的には「帯のメインキャッチコピー」は2行以内で読めることを意識しています。3行だと、「2行の4倍読みづらい」。4行だと「2行の8倍読みづらい」。つまり、1行増えるたびに「乗数で読みづらさが増していく」んです。


そして、もう1つ大切なことは、「タイトル」や「帯のメインキャッチコピー」を読むときに「考えずに、眺めただけで読める」ってことで、つまりそれは、「見た瞬間に考えなくても意味が読者に伝わるタイトルやコピー」を心がけています。だから、たとえば「タイトル」をジ~っとみて、2~3秒考えて、「あっ、なるほど、そういうことかぁ!」っていう風に、いったん「人間の思考回路」を通ってから理解されるのでは、スピードが遅い。みなさん、書店を歩きながら「本をスキャン」しているわけですから、「歩くスピードで見ても一瞬で考えずに意味が眺めとれる」ことが大切なのです。


あ、ちなみに、著者を知り合いから「紹介」してもらったりするパターンではなく、僕から著者に依頼をするパターンのときは、著者に初めて会いに行くときに、すでに「表紙はできあがっている状態」です。つまり、Macのイラストレーターのソフトを使って、「60%程度の完成した表紙」を自分で作って、プリントアウトして持って行くのです。


——なぜ、一番最初に「著者に表紙を見せる」のですか?
いわゆる「企画書」より早いからです。だって、みなさん「書店で本を買うとき」って、「本の表紙」を見て手に取るかどうか考えて、購入しますよね。つまり、「一番最初のとっかかりは本の表紙」なわけです。つまり、「最終的に本の表紙で手に取るかどうか決める」のであれば、著者にだって「最終的に売られている状態の表紙」を見せて、書いていただくかどうか決めてもらったほうが早いし、イメージがわきやすいのです。


だって、最終的にはは、そうやって売るんですから。だから「本の最終形である表紙」を一番最初につくって、著者に見せて、「著者の○○さん、この表紙の本を出したいですか?」と、ただそれだけの方が早いんですよ。社内の「営業」にプレゼンして説明するときだって、「表紙」を見てもらったほうが、圧倒的に早いし、イメージだって伝わりやすいので、僕は出来る限り、時間の許す限り「表紙を最初につくる」ことをしております。もちろん、60%の完成度の表紙ですから、あとで、じっくりたっぷり時間をかけて、「100%の本番バージョン」を作り直しますよ。


また「表紙」をつくるときのポイントとしては、「もう一度ここで改めてマーケットスタートで考える」ことを、自分に言い聞かせます。「そもそも誰のためにどういう本を作っているのか?」というのは企画を練っている段階では、頭の中で考えていても、時間が経って、「表紙」をつくる段階になると、忘れてしまっていたりするものなのです。人間は「忘れる生き物」なのですよね。だから表紙を作るときも「そもそも読者がどういう表紙を求めているのか?」というところに立ち返って考える習慣をつけておかないと、「読者ニーズにを喚起する表紙」にならなかったりするわけなんです。


結局……、やっぱり最終的には、常に、すべての部分で考えなければいけなくて、決して忘れてはいけない大切なことっていうのは、どこまでいっても「読者の感情からスタートすること」であり、その「読者の声なき声」を察知していくことであり「読者が自分自身ですら気づいていない心の奥底のニーズ」を察知していくことなのです、That’s All.


(続く)

本当に頭がよくなる1分間勉強法
「本当に頭がよくなる1分間勉強法」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:石井 貴士
 出版:中経出版
 発売日:2008-08-22
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100%幸せな1%の人々
「100%幸せな1%の人々」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:小林 正観
 出版:中経出版
 発売日:2008-01-10
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もうひとつの幸せ論
「もうひとつの幸せ論」
 [単行本]
 著者:小林 正観
 出版:ダイヤモンド社
 発売日:2010-01-16
 by ええもん屋.com

ダイヤモンド社 飯沼一洋さん Vol.3

更新日: 2010年 9月 21日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック1件

  1. 大野夏美 より:

    以前からブログを拝見させていただいたおりました。

    とても参考になりました。
    ありがとうございます。

    「電車の中で、素がでる」ということに
    ドキッとしました。

    余裕のある自分を想像して
    やってゆこうと思います。

    ありがとうございました。

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