『王様の仕立屋』『銀のアンカー』など、数多くのマンガのヒットメーカーである
集英社『スーパージャンプ』編集部の増澤吉和さん。
競争の厳しいマンガの世界で売れる本を出し続けていくための
「売るためだったら何だってするキャッチコピー力」の極意をうかがった。



※一部、「キャッチコピー力」に納まりきらないものもありますが、それは編集後記にて。

増澤吉和(ますざわ・よしかず)さん
1974年生まれ。長野県出身。上智大学文学部卒。
1997年(株)集英社入社、『スーパージャンプ』編集部配属。
以来数十本の連載作品を担当。



①売るためだったら、タイトルだって変える
かつて『スーパージャンプ』誌で連載されていた
東村アキコ先生の『高円寺チェリーボーイズ』。
同氏のヒット作『ママはテンパリスト』の人気に乗っかっていくために、
単行本化の際に、『テンパリスト☆ベイビーズ』に変更。
作品のタイトルを変えて相乗効果を狙う(「乗っかり商法」)。実際にヒットに。


: 『ママはテンパリスト』と『テンパリスト☆ベイビーズ





「著者より、マンガ内の『プライド』というタイトルのあとがきに、
『あなたにはプライドというものはないのですか?』という、
愛情あふれるメッセージをいただく」


②売るためだったら、出版の時期も価格も変える
上記の『テンパリスト☆ベイビーズ』は、
単行本化できる状況だったがすぐには出版しなかった。
『ママはテンパリスト』の2巻が出るタイミングに合わせた。


また、『ママはテンパリスト』2巻と一緒に買うと、
Amazonの配送料が無料になるという絶妙な価格設定にした。


③売るためだったら、テーマも変える
三田紀房先生には、出世作の『クロカン』が好きだったので、
以前から「もう一度野球マンガを書いてください」と依頼していた。
しかし、『ドラゴン桜』がヒットしたのをみて、「受験の次は、就活でしょう」と、
依頼内容をコロッと変えて描いてもらった
(もちろん、「大学に行っただけでは、幸せにならない」という、ちゃんとした意見も提示)。
それが、『銀のアンカー』。





④売るためだったら、帯のコピーも変える
『銀のアンカー』の帯のコピーも、発売ごと、増刷ごとに、連載が進むにつれて
就職環境が悪化していったこともあり、
そのときの状況によって、刺さるものに変えた。


ちなみに1巻の表紙のコピーと下記帯にある「天職につかせてやる」と、
「(仕事は)金で選べ」というセリフは反響が大きかった。
「給料が大事というのは、会社に入ってからはじめて実感する」。
働いている人の本音で、だれも言わなかったこと。
大学のキャリアセンターの方から、「よくぞ言ってくれた!」という声があった。





⑤売るためだったら、とにかく目立たせる
通常、マンガの表紙はマンガのイラストがほとんどだが、
書店で平積みで並んだとき、マンガのイラストのカバーが多いなかに、
実写があれば目立つと考えた。


:『王様の仕立て屋





⑥売るためだったら、いろんな方向で伝える
『王様の仕立て屋』のヒットにより、
洋服のウンチクの関連本として、
『ナポリ仕立て奇跡のスーツ』という写真を中心とした副読本的な単行本、
『スーツの適齢期』という新書など、1つのコンテンツから派生して、いろんな方向で展開した。
マンガから、単行本から、新書から、いろんな方向からの入り口ができる。
それぞれ、置き場が違うところをあえて利用した。





⑦売るためだったら、使えるものは何だって使う
使えるものは、何でも使う。担当している『本屋さんにききました。』は、
読者アンケートで、つまらない1位だった。
しかし、これは使えると、とマンガ内でも取り上げる。
そこそこおもしろいよりも、何であれ1位は、売りになる。





[『本屋さんからききました。』からの金言]
増澤氏が現在編集担当しているマンガが、若狭たけし氏の『本屋さんにききました。





「読者と作品が出会う場所は書店。じゃあ、どんなマンガが売れるか実際に書店員に教えてもらおう」をコンセプトに、実際に書店に行き取材する過程を描いた
ドキュメント風ギャク漫画(9月17日発売)。


1年近くの連載を経て、このたび単行本化されたこのマンガには、
書店でどんな本が売れるかのヒントが数多く載っている(「完全に他力本願なコンセプトですが、ヒットの秘訣がつまった、この本が売れないわけがない(笑)」)。





今回はその本の中から、書店員の皆さんからうかがった数多くの金言のうち、
3つだけを取り上げさせてもらう。


★「売れるマンガはタイトルが略せるものが多い」
(ジュンク堂書店 新宿店 コミック仕入れ統括 小磯さん談)


:『鋼の錬金術師』 → ハガレン(3800万部)
『花より男子』 → ハナダン(6000万部)
『スラムダンク』 → スラダン(1億1000万部)


最近は、さらに進化して最初から略されたような、ひらがな4文字のものも多い。
『けいおん』、 『らき☆すた』、『みなみけ』、『よつばと』


「『本屋さんでききました。』も、『ほんきき』と略すのは普通なので、
いっそのこと『ポンキッキ』と略しては、という案も(笑)」


★「誰に読ませたいマンガがはっきりさせよ」
(まんが王 八王子店 バイイングマネージャー 日吉さん談)


誰に読ませたいマンガなのかがハッキリしていれば、
書店としても非常に売りやすいススメやすい。





★「みんなで語れる要素をつくれ!」
(ジュンク堂書店池袋本店 主任 コミック担当 田中さん)


みんなで語りあえる要素(必殺技、人気キャラ等)がどれだけあるかが、
多くの人に読まれる、つまり売れる作品のカギになる。


[その他の印象に残った言葉]
「一貫性なんてどうでもいい(『銀のアンカー』も、当初の依頼内容とは異なり、受験の次は、就職という流れで誕生)」


「『これが絶対当たる!』と思うよりは、『読者はこういうのが好きなんだ』ということを大事にする。作り手の『売れるかもしれない!』というのは、勘にすぎない」


「アンケートは見るけど、見ない。意外な読者の方がいるなど、新しい発見が多く、アンケートは参考にするが、すべてを気にしすぎて真ん中をいくと、縮小再生産になりがち」


「何でもあり。タイトルを変えたり、カバーを変えたり、あらゆることをして、それでだめだったら、
評価されなかったということなので、売れるためだったら何だってする」


「入社時は、青年マンガの編集部に配属されるとは思わなかった。しかし、取材をしてコンテンツづくりを一緒に担える、一緒にものづくりができる面白さは、うれしい誤算」




文字通り、売るためには、できることはすべてやる。





「キャッチコピーだけで売れた漫画ってあんまりないんですよ。今回の趣旨と合うかどうか」
と言いながら、次から次へと本を売るための秘策を語ってくれた増澤さん。
そのどれもどれもが、枠にとらわれず、おもしろく、「そこまでやるか!」と感心するものばかり。
さすが、競争の激しいコミック界でヒットを連発しているからこその、徹底ぶり。
「キャッチコピー力は言葉だけじゃない」「いかに、心をつかむか」
ということを改めて実感した1時間半だった。


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『スーパージャンプ』編集部 増澤吉和さんが語る 売るためだったら何だってする「キャッチコピー力の極意7カ条」とは?

更新日: 2010年 9月 21日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック3件

  1. 高川雄一郎 より:

    未曾有の国難に見舞われたこの時期に、人心を混乱させるような大袈裟な見出しで、不安を煽る記事を編集する奴が偉そうな事を言うな!
    尾木和晴、編集長としての責任は重いぞ。

  2. ともぞう より:

    「放射能がくる」
    「原発が爆発した」
    持てる能力を最大限,彼は何かの目的のために発揮しているのでしょう.私には理解できません.
    現在AERAのサイトは閲覧できない状態になっています.

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