数多くのベストセラーをプロデュースし、
日本を代表するビジネス書評家としても有名な土井英司さん。
待望の3年ぶりの新刊『20代で人生の年収は9割決まる』も12月16日に発売され、
編集者との交流も多い土井さんに、
デキる編集者だけが知っているキャッチコピー力の極意をうかがった。


土井英司(どい えいじ)さん
プロフィール
出版マーケティングコンサルタント /ビジネス書評家/有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役/日刊書評メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。大学卒業後、ゲーム会社を経て編集者・取材記者・ライターとして修行。日経ホーム出版社を経て、2000年に世界最大のオンライン書店アマゾンの日本サイトAmazon.co.jp立ち上げに参画。エディター・バイヤーとして、売れる本をいち早く見つける目利きと斬新な販売手法で『ユダヤ人大富豪の教え』(50万部突破)、『もえたん』(17万部突破)など数々のべストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2001年、同社のCompany Awardを受賞。
2004年、有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立。日本一ビジネス書を売る評家としても活躍。現在は、日経BPnet「ビズカレッジ」で連載するほか、自らのメールマガジン『ビジネスブックマラソン』でも執筆中。2010年12月16日に、新刊『20代で人生の年収は9割決まる』を上梓。





大前提 「キャッチコピー」の「キャッチ=つかむ」とは、人間のどういう心理状態をつかむかである




極意1 デキる編集者は、人の感情が「欲望」と「恐怖」を軸に動くことを知っている


人間の感情が大きく動く要素は、「欲望」と「恐怖」。
デキる編集者は、「欲望」と「恐怖」をタイトルやコピーに反映させ、
読者の気持ちをキャッチする。


:『病気にならない生き方』新谷弘実著(サンマーク出版)
サンマーク出版の高橋編集長は、つくり手としてこれがとてもうまい。
このタイトルは、『健康になる生き方』ではなくて、『病気にならない生き方』、つまり病気を意識している人間の恐怖心に鋭く突き刺さる。


そして、帯のコピー「医学が進歩しているのに、病人が増えるのはなぜだろう」で、
さらなる「恐怖」の感情を刺激する。
しかし、本の中身で「今からでも遅くありません」という「救い」を示す。
そして「健康な人の胃腸は美しく、健康じゃない人の胃腸は美しくない」というような具体例を示す。


極意2 デキる編集者は、タイトルの裏にあるメッセージを意識している


ストレートなタイトルの裏には、必ずネカティブな背景が隠れている。
たとえば、


 バカでも年収1000万円』 
「頭はいいけど行動できない人が多い」という背景


 誰とでも15分以上 会話がとぎれない!話し方66のルール』 
「会話がとぎれる」という恐怖


……というように。デキる編集者は、一見普通のタイトルに思えるかもしれないが、
背景にある、人間の感情を刺激するネガティブな感情をつかんでいる。


それ以外の例:『くじけないで』柴田トヨ著 (飛鳥新社)
歳をとったら衰えるのが当たり前。
くじけるのが当たり前。病気をするのが当たり前。
本来いろいろとつらいこともある。
それにもかかわらず、内容はとてもポジティブ。
99歳の著者が一所懸命、芯を保とうとしている。


「九十八歳でも恋はするのよ」
「九十七の今もおつくりをしている誰かにほめられたくて」
などの言葉がいじらしい。読者の感情を刺激する。
ネガティブな背景があるからこそ、ポジティブが売れる。
現在は、65歳以上の老年人口が2800万人を突破している時代。
病気で苦しむ方や、身体の衰えを感じて沈みがちな世代を励ますタイトルが、
これからも求められると思われる。


極意3 デキる編集者は、読者が実用だけを求めているのではないことを理解している


読者は実用だけを求めて本を買うのではない。
デキる編集者は、「読むけど、やらない人」、もっと言えば、
「読まないけど、本を部屋に置いておく人」の存在まで意識して本をつくる。
そのときに、「タイトルが読者の自尊心を刺激するものになっていること」が重要。


:『自分の小さな「箱」から脱出する方法』アービンジャー ・インスティチュート著(大和書房)


元々、他の出版社から『箱』というタイトルで出版されるも、それほど売れなかった。
それでは箱に入っているイヤな状態から抜け出す爽快感が表現されていない。
新しいタイトルの「自分の小さな『箱』」=「ちっぽけな自分」という意味。
つまり、人間の自尊心と直結するタイトルになっている。
そこから「脱出する方法」ということで、
「あなたはそんなちっぽけな人間ではないでしょう?」
という、自己欺瞞から抜け出す励ましの意味が含まれている。


極意4 デキる編集者は、時代の空気を感じ取ってタイトルやコピーに反映する


時代の空気とタイトルがマッチしたことで売れる本も多い。
その点、ディスカヴァー・トゥエンティワンは、時代の空気を読み取るのがうまい。
今がどういう時代かを受け止めた上で、時代の空気に合う情報を出している。


:『年収200万円からの貯金生活宣言』横山光昭著(ディスカヴァー・トゥエンティワン)


帯のコピーは、「こんな時代だから、やっぱり私たち、貯金します!」。
年収200万円でも貯金ができるというポジティブなタイトル。
しかしその裏には、年収も増えない、先行きも老後も不安という時代の空気がある。


極意5 デキる編集者は、「使われる場面によってコピーの果たす役割が違う」ことをわかっている


本に関連するキャッチコピーは大きく分けて以下の4種類。
それぞれ果たす役割が違うので、必然的に違うコピーが必要となる。


①パッケージのコピー(=タイトル、帯のコピー等)
②コンテンツ内コピー(=見出し等)
③書店員などその本を売る人に向けてのコピー(=営業用コピー)
④最終顧客(読者)に対するコピー(=POP、広告など)


いい本を作ればそれだけで売れるというのはウソ。
たとえば、本が書店に並ぶには、出版社の営業マンのキャッチコピー力が大事。
それは、本というパッケージの中で使われるコピーと役割が違って、
ロジカルな部分が必要になってくる。


編集と営業が語るべき言葉は違う。
デキる編集者は、営業マンが語るべきキャッチコピーを提供することができる。


:『ハーバードの「世界を動かす授業」』リチャード・ヴィートー、 仲條 亮子 著(徳間書店)


徳間書店の営業マンは、以下のフレーズを売りにした。
「この本は、共著者がハーバードAMPの授業を受けて感銘を受け、社長に直談判してまとめたもので、翻訳じゃない、日本オリジナル出版なんです」
このストーリーを聞いて土井さんの心は動いた。利害関係はなくても、売れてほしいと思った。自身の書評メルマガ『ビジネスブックマラソン』で紹介したら、すごい反響となった。
その記事を読んだ徳間書店の営業マンが感動し、一気に4万部増刷という異例の事態となった。


[5カ条以外で印象に残った言葉]


「編集者にとって『キャッチコピー力』があるかどうかは一生涯の問題」


「著者と読者の気持ちをつなげるのが編集者の役割。それができないと編集者じゃない」
 
「売れている本でも、『本当はもっと売れたでしょ』と思うときがある。タイトルが違っていたら、帯のコピーが違っていたら、本当はもう3倍くらい売れたのにという残念な本。でも売れているからそれが編集者の成功体験になってしまい、自分を見失ってしまう」


「編集者の評価は何万部売ったなどという相対的な基準ですべきではない。素材(著者・テーマ)のよさを最大限使って売るのが本当に魅力的な編集者。料理と同じで、『この素材でここまでの味を出したか〜』と人を感動させることができる人」


「この先生は有名だから。今の旬のテーマだから。という理由で本をつくるのはやめたほうがいい。本は時代をつくることができるメディア。そのチャンスを与えられている編集者が、そういう思考をしていたらもったいない」


「読者を差別せずに、その人が抱えているさまざまな問題を解決するために企画する。そんな人間力のある編集者に仕事してほしい」


「タイトルを考えるとき。自分がモヤモヤと感じている気分にはまる言葉を探すのに妥協してはいけない。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田真哉さんと話していて、『タイトルを考えるのって最低でも3週間はかかるよね』という意見で一致した。モヤモヤとしたものを考え続けていると、あるとき、パッと出てくる。それまで絶対妥協しないほうがいい」


「モヤモヤが解決できないときは、街に出かけてみる。クロスメディア・パブリッシングの小早川代表は、明日香出版社の編集者時代、飲み屋で営業マンたちが『断りてえよな〜』とグチを言っているのを聞いてひらめいた。『そうか、営業マンは断りたいんだ!』と。そこでネットで『営業マン』『断る』で検索したところ、経営コンサルタントの石原明さんがヒット。氏が出していた同名の小冊子に加筆してもらい、『営業マンは断ることを覚えなさい』は見事ベストセラーになった」


「編集者の仕事は、人間を理解し、社会を理解し、世界を理解すること。
自分の器を広げる努力をしてない人は いろんな人の気持ちを理解できない」


「編集者の仕事は、読者の気持ちがわかっているかどうか、に尽きる。結局は人間に注ぐ温かいまなざしがあるかどうかではないでしょうか」




毒にも薬にもならない、
普通なものは心にひっかからない。




1時間の取材は、なるほどと思う名言のオンパレード。
記事にしないで自分だけでキープしておきたいなと思ったくらい。
取材しながら何度か自分の本について思いを巡らしてしまった。
川上徹也




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エリエス・ブック・コンサルティング代表 土井英司さんが語る「デキる編集者だけが知っているキャッチコピー力の極意5カ条」とは?

更新日: 2010年 12月 15日| このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

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コメント / トラックバック3件

  1. 高川雄一郎 より:

    未曾有の国難に見舞われたこの時期に、人心を混乱させるような大袈裟な見出しで、不安を煽る記事を編集する奴が偉そうな事を言うな!
    尾木和晴、編集長としての責任は重いぞ。

  2. ともぞう より:

    「放射能がくる」
    「原発が爆発した」
    持てる能力を最大限,彼は何かの目的のために発揮しているのでしょう.私には理解できません.
    現在AERAのサイトは閲覧できない状態になっています.

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